【CoCセッション】盲目のクピド


その2

最後のスタンプラリーを終え、受付でスタンプラリーの紙を見せると、記念品が貰える。

小さなハート型のピンバッチだ。互いに1つずつ受け取れる。

 

狩「わ、なんかもらった!」

藤「本当だ…。…お揃いみたいでちょっと気恥しいな…。」

狩「せっかくだからさ、つけようよ。お揃いで同じところにつけよう。 」

藤「どうしよう…どこがいいかな。…これ、服につけると多分洗っちゃうから、カバンがいいかも…。(カバンにつける)」

狩「うん!(カバンにつける)」

 

 

あなた達はそうして、美術館を後にするだろう。

 

気が付けば、外はすっかり夕方だ。

周囲に人気もなくなり、あなたは一日の終わりを感じる。

それは狩屋も同じようで、あなたの横を歩きながらなんとなく名残惜しそうに言った。

 

狩「ねえねえ、藤谷くん。ちょっとさ、あそこの公園寄ってこうよ。 ちょっとなんか話足りないからさ、もっとお話したい。」

 

そう言って、彼はあなたが今朝見た噴水の方を指差す。

 

藤「…わかった、いいよ。」

 

公園の中は日も落ちる頃という事もあってか、誰もいない。

噴水から静かに溢れる水が、夕日に照らされて綺麗だ。

 

狩「今日は来てくれてありがとね。めっちゃ楽しかった!」

藤「あ、うん…。僕もすごく楽しかった。」

狩「途中なんか寝ちゃったり、電話行ったりとかして、藤谷くんと一緒にいられなかったのはちょっと残念だったけど…。」

藤「まあ、でも、しょうがないよ。それは。」

狩「うん。またこうやって遊びに行こうね!」

藤「うん…。(気まずい)」

 

あなた達が談笑していると、ふと狩屋が黙った。

何か言いたげにあなたを見つめる瞳が揺れる。

そして、何か意を決したように口を開いた。

 

 

狩「……あのさ、」

藤「…うん…。」

狩「藤谷くんに、今日ちょっとどうしても言いたいことがあって。」

藤「うん…。」

狩「藤谷くんが好きだから、おれと付き合ってほしい。」

 

あなたは、狩屋に告白される。

いつも遠くを見ていた狩屋の瞳は、確かにあなたを捉えていた。

酷く情熱的に、真っ直ぐにあなただけを見ていた。

目の前の狩屋が本気で言っている事は分かるだろう。

狩屋は、少し照れた、それでいて不安な様子であなたの返事を待っている。

 

しかし、あなたが何か言葉を返そうとしたその瞬間、くらりと眩暈がする。

そのまま、あなたの視界は真っ暗になり、意識を失った。

 

 

 

 

あなたは、目を覚ました。

見慣れない天井に周囲を見渡すと、そこはどこかの部屋のようだった。

あなた達は真っ白なベッドの上に居る。

自分の傍を見ると、そこには狩屋がいる。あなたの傍で、すやすやと寝息を立てて寝ている。服装は互いに先程のままで、荷物もそのままだ。しかし、彼の目元には黒い布で目隠しがしてある。

 

あなたが困惑していると、狩屋が目を覚ましたように身じろぎする。

 

狩「藤谷くん?どこにいるの……?手、握って?」

藤「(軽く握る)」

狩「(強く握り返す)」

 

あなたが自分が此処に居る事を示すと、狩屋は安堵するように笑う。

 

辺りを見回すと部屋は真っ白で、置かれているのはベッドのみである事に気が付く。

窓はなく、ひとつだけ扉があるのが見えるだろう。

そうして辺りを観察していると、狩屋がなんとなく急いた様子であなたの手を掴んだ。

 

狩「…あのさ、さっきのことなんだけど。藤谷くんのことが好き。」

藤「…うん。」

狩「……なんだか、今、もっと好きでたまらなくなった。おれを受け入れてくれる?……返事、聞かせて?」

 

狩屋はあなたの手を取り、自分の頰に添える。

狩屋は、あなたの返答を待っている。

 

藤「……ごめん、狩屋くん。(狩屋の目隠しを外す)」

 

あなたが狩屋の目隠しに手をかけると、それは二人の間にあっさりと落ちていった。

開いた狩屋の両目が、ゆるりとあなたを捉えた。

微睡から覚めかかったような瞳は、涙で濡れて、あなたを見つめて、酷く悲しそうに呟く。

 

狩「どうして?……おれの事、好きじゃないの?」

狩「……受け入れてくれないんだ……」

 

あなたには、その狩屋の感情が痛い程にわかってしまった。

こんなに想っているのに、届かない。

こんなに好きなのに、受け入れてもらえない。

それは、重ならない互いの心を嘆く失恋の痛みだ。

 

それでも、あなたは相手を盲目から解放した。

例え相手を傷つけようとも、自分の心が傷ついても、ただ相手を愛しているが故に。

 

狩「あれ?ここどこ?」

 

しかし次の瞬間、はっと狩屋は目が覚めたように揺らいだ。

その瞳は、もうあなたを情熱的に見ることはしなくなった。いつも通りの狩屋聖人だと思うことだろう。

 

 

藤「…えっと…、今日1日のこと覚えてないの?」

狩「今日は美術館に行ったよね。2人で。」

藤「うん…。」

狩「えっと、で、その後公園でお話してたよね。」

藤「うん。」

狩「あんまり覚えてないけど…」

藤「…………。……まあ、帰ろうか。」

 

 

あなた達が、二人で扉を潜ると真っ白な光に包まれ、いつの間にか噴水の前に戻ってきていた。

気が付けば、辺りはもう暗い。互いにいつも通り、しかしどこか気まずいまま、あなた達は家に帰る事だろう。

 

竹 はいはい!はい!はいはいはい!!

塵 な、何?

竹 告白していいですか?

塵 う、うん、じゃあ、気が付けばあたりはもう暗い。噴水で。

 

狩「 戻ってこれた!よかったー。めっちゃ暗くなっちゃったね。大丈夫かな。」

藤「…もう帰った方がいい?狩屋くん。」

狩「わかんない。でも多分大丈夫だよ、今から帰れば間に合うし。」

藤「もうちょっと話してもいい?」

狩「いいよ、座ろう。(ベンチに座る)」

 

狩「さっき何話してたか全然覚えてないや。」

藤「…あのさ。」

狩「うん!」

藤「大事な話になるんだけど。」

狩「うん、ちゃんと聞くよ!プラネタリウムでは寝ちゃったけど、寝ないよ、今度は。」

藤「…えっと…今からその、話すことは…、」

狩「うん。」

藤「…なんていうか、うーんと……、僕のこと嫌いになるかもしれない…。」

狩「そうなの?」

藤「うん。でも、いつか言わなきゃいけないことだから…。」

狩「藤谷くん、なんか隠してたの?おれに。」

藤「うん…。」

狩「隠し事は無しだよ。親友だもん。」

藤「…じゃあ、言うよ。」

狩「うん!」

 

藤「…狩屋くんのことが好きです。…えっと、それは友達としてとかじゃなくて…、あの……恋人になりたいんだ。」

藤「…………狩屋くんのことを…愛しているんだ……。」

狩「…じゃあ、藤谷くんが卒業までに告白したいって言ってたのって、おれのことだったんだ! そうなんだ…じゃあ、達成できたね!」

藤「……な、あの、えっと、…あ、まあ、そういうことだから。あの、えっと、 む、無理なら無理で、その、 友達のままなら友達のままでいてもらっていいし…。あの……、僕のこと気持ち悪いって思うなら……、」

狩「気持ち悪くないよ。」

藤「…………狩屋くんに決めてほしい…。」

狩「……今言った方がいい?💦」

藤「…いや……悩んでくれるだけ嬉しいよ……。」

 

狩「…なんかね、女の子からね。告白されたことあるんだけど、前に。」

藤「…うん。」

狩「その時はね、その、その女の子のことは好きじゃないから、断らなくちゃって思って断ってたんだけど。…今、藤谷くんに告白されて、断っていいのかちょっとわかんなくて。」

藤「…な、なん、…なんで…?」

狩「わかんない。でも、なんかわかんないんだけど、なんかね、 なんか断るのは違う気がするんだけど、でもなんか告白されてね、断る以外したことないからちょっとわかんなくて。今、今返事した方がいい?」

藤「……えっと……あの、これは僕の考えなんだけど。その…、恋人 として……本当に、自分が好きだって思う人と付き合った方がいいと思う…。……だからもし狩屋くんが、今そこまで僕のことをそういう風に 思えないんだったら…、今はまだ付き合うときじゃないんだと思う。」

狩「そうなの?」

藤「うん。」

狩「1日考えてもダメなの?」

藤「考えてもいいけど。考えてもいいけど……ごめん、僕が 多分急いてるんだろうね…。」

狩「藤谷くんが、今欲しいって言うなら、ちょっと…そうだな。保留、うん。保留になっちゃう。」

藤「…待つよ。大丈夫。ずっと待つから。」

狩「本当?」

藤「うん。1日じゃなくてもいいよ…。」

狩「本当?じゃあ、決まったらおれから話すね。」

藤「ありがとう…。」

狩「じゃあ、おれが返事するまでは、これからも遊ぼうね!」

藤「え、あ、そ……いや、うん、わかった…、それまで友達…。」

狩「うん!」

藤「…とりあえず今は友達のまま、…うん、わかった…。」

 

藤「ご、ごめんね。なんか帰り際に…。」

狩「大丈夫だよ! じゃあ、また誘うね!」

狩「ばいばい!」

藤「ばいばい…。」

 

 

あなたは、狩屋の想いを受け入れなかった。

 

自身の欲にも惑わされず、例え二度と彼が自分を好きにならなくても、

それでも良いとただひとつの”あなたの愛”を示した。

そんな'あなたの愛'を抱えて、今日も生きていくことだろう。

 

あなたはある日、狩屋があの日のピンバッジをつけたままである事に気が付く。

単なる気まぐれかもしれない。

しかし、もしかしたらあなたが示した愛は、無駄ではなかったのではないだろうか?

ほんの少しでも狩屋の胸に残るものがあったのではないだろうか?そう思うことも出来るかもしれない。

それが何を意味しているかは、目隠しを外したクピドが飛び立つ未来の先に分かるのかもしれない。

 

 

ENDA『あなたの愛』

AF:ハートのピンバッジ

KPCの耐久力が0になった時に、無条件で1D3回復できる。一度使うと壊れる。

 

 

【シナリオ背景】

よりたくさんの精液を接種したいリリス様。そうだ、直々にカップルを作って抱きあってもらえば良いじゃない!既に誰かに思われてるKPCなら手間も省ける!ある日、突然リリスの力によってKPCはPCに猛烈な好意を持つようになります。導入からKPCはPCの事が好きで好きでたまりません。シナリオはそんなKPCがPCをデートに誘う所から始まります。

ところが何やらリリスが面白い事をしていると目をつけたニャル様。片思いの相手に相手の好意が他者による作為的なものだとバラしたらどうなるだろう?受け入れる?受け入れない?