【CoCセッション】イロドリ

その3

貴方は会わなければならない。彼女に。騙していたことを問い詰める為、彼女の失ったものを取り戻す為、或いはその他に何かを思ったのか。貴方の足はあの場所へと向かう。海浜公園のベンチに座っている人間の姿がある。それは、冨家ののだ。貴方の姿を捉えると、薄く笑う。

 

冨家のの「やっぱり来てくれたんだ、嬉しいよあたし。…………なんてな。もういいか、こういうのは。言いたいことがあって来たんだろ、それとも恨みを晴らしに来たか?まぁ、何にしたって、俺はもうお前を殺す気はねぇよ。元々あの場所で壊してやるつもりだっただけで、不思議と今はそんな気になれないんだ」

冨家のの「なんでだろうな、なんて……お前に聞くことじゃねぇのに」

彼女はもう、貴方に対して冷たい目を向けることは無いだろう。会話ができます。

 

高松彰吾「…………随分俺を信頼してるんだな」

冨家のの「まあ、それなりの付き合いだしな」

高松彰吾「いいのか、クライアントは」

冨家のの「……まあな、もういいんだよ」

高松彰吾「……隣、いいか」

冨家のの「…………、勝手にしろ」

高松彰吾「……出来事そのものは覚えている…ってことでいいんだよな?」

冨家のの「…………ああ、そうだな」

高松彰吾「(ごそごそとポケットをまさぐり、チケットの残骸を取り出す)…これ、……こんな有様になるまでずっと…俺は肌身離さず持ってたみたいだな。(自傷気味に笑う)…あんたの…記憶を取り戻す方法も考えたが、何も思いつかなかった。……あんたに俺を殺す気が無いなら…無理に取り戻さなくてもいいとすら、今は思う」

 

高松彰吾「ただ…冨家、お前の気持ちを…俺だけが知っているのはフェアじゃない。気に食わねえ。だから…お前にとってははた迷惑かもしれんが、…俺の気持ちを伝えさせてほしい。俺はお前を…冨家ののを愛している。…この先も隣に居たいと思っている。……約束を果たしたいと思っている(チケットに視線を落とす)」

 

高松彰吾「…断るなら断れ。少なくともあんたにとっては他人だろ。仕事人サマの貴重な時間を奪うことになるからな」

冨家のの「っ…………そんなこと、聞いてない…………。俺の気持ちって、お前はただの、ターゲットのはずだろ(チケットを見ると瞳を揺らし、焦った様子で視線を逸らす)」

高松彰吾「……そうか。…お前の日記の内容も、あの胡散臭え女の話も、お前が火事場に飛び込んで助けてくれたことも…俺は全部覚えてるけどな」

冨家のの「日記……そんなの、俺は知らない。知らねぇよ……俺は何も、知らない……違う、分からない……」

高松彰吾「……随分動揺してるな。…大丈夫か?」

冨家のの「っ……何?何だ?……俺が、お前に思っていたことって?違う、だってそんな感情どこにも!

冨家のの「なぁ、教えてくれよ、俺は一体何を忘れてるんだ……!?」

頭を押さえて苦しみ出す。戸惑う彼女の体が小動物のように震える。

 

高松彰吾「…………、(意を決して唾を飲むと、冨家に顔を近づけ口づける)」

冨家のの「え、なっ…………!?(行き場を無くした両手が虚空を掴み、目を見開いたまま固まる)」

高松彰吾「………………、……悪い…………、(口を離すと視線を逸らし、咄嗟に口元を隠す)」

冨家のの「…………っ、(高松から目が離せず暫く無言で見つめる)」

 

彼女が貴方を見つめる。優しく切なそうに微笑みながら、涙が頬を伝って零れ落ちた。

冨家のの「あたしが忘れるなんて、どうかしてたね……(雫と共に、ポロポロと灰色が剥がれ、やがてはちみつ色の目が光を取り戻す)

 

泣きながら笑う。彼女の瞳の色は、こんな色だったのか。そう思う事だろう。

高松彰吾「ッ…………!…冨家……!…………思い出したのか…………?」

冨家のの「うん…………全部」

高松彰吾「…………、……。(たまらず強く抱き締める)」

冨家のの「あ、ちょっ……!…………っ、……(一瞬身体を強張らせるも、おずおずと高松の背に手を緩く回す)」

 

冨家のの「……あたしは、あんたを愛することを忘れることを条件に助けに向かった。でも、ダイブインの最中に声を聴いたの。怪しい感じで笑う声がね、『ただ忘れるだけじゃつまらない、どうせならもっと面白いものを。さぁ、僕の余興に付き合ってくれ』って。気が付いたら、失った記憶の代わりに間違った感情……殺意が芽生えてた。本当だったら今もその感情に襲われて、あんたに会ったら今頃殺意を向けてたかもしれない。でも、自分自身の中でたかまっつんは記憶を取り戻しながら、あたしに沢山優しい言葉をかけてくれて、思い出を必死に思い出そうとしてくれた。だから、きっと作られた感情の殻を破ることが出来たのかな、って……」

 

冨家のの「だから……ほんとに、ありがとうね。彰吾」

高松彰吾「……俺は……別に何もしてねえ…。…いつも通り行動しただけだ……」

冨家のの「…………そっかぁ……。でも、ありがとう……(高松の肩口に頭を預ける)」

高松彰吾「…………(抱き締めたまま、しばらく冨家のぬくもりに浸る)」

冨家のの「…………あ、あの、たかまっつん……?……そろそろ、その…………」

高松彰吾「…あ、…ああ、そう……っだな…………、……すまん…。(身体を離す)」

冨家のの「いや…………うん、えっと………………(何か言おうかと迷いながら視線を泳がせる)」

高松彰吾「…………どうした?」

冨家のの「あ、の…………あたしも……たかまっつんのこと、……あ、愛、してる…から……って、恥ずかしすぎでしょこれ…………っ(途中まで真剣な表情で伝えるも、笑って恥ずかしさを誤魔化す)」

高松彰吾「………………、……なんだ…、随分初心な反応するんだな?」

高松彰吾「……まあ……俺もだが」

冨家のの「……うん……、お互い様でしょ……」

高松彰吾「…………あー、その……まあ、なんだ……これからもよろしく……」

冨家のの「……うん…………」

 

帰ろうと、貴方が手を取る。その時、妙な音と共に冨家の体が強張る。どうしたのだろうかと、冨家を見ると彼女は倒れてしまう。彼女が倒れた、その奥を見れば貴方達の方に向かって拳銃を向ける男が居た。這い蹲うようにしている男性は白衣を纏っている。

男性「お前のッ……お前のせいで、私の素晴らしい研究が全て台無しだ……ッ‼これだから、低能な人間は嫌いなんだ!あぁ、クソ、なんでお前は生きてんだよォ!実験で散々ぐちゃぐちゃにしてやっただろうが……あれ、切り刻んだんだっけ、 何したんだっけ……まぁ、いいか、そんなことどうでもいい。おい、お前。そいつを渡せ。そいつの脳解剖をして新しい実験を始めるんだ」

 

高松彰吾「……チッ……、…クライアント様かよ……、(咄嗟にしゃがみ込むと、庇うように冨家を抱きかかえ男を睨みつける)」

男性「なんだ、よ、お前も邪魔すんのか……うぜぇな、うぜぇうぜぇめんどくせぇ!邪魔するってんならお前もここで死んじまえ!!」

 

ふら付きながらも再度、貴方に銃口を向ける。逃げるのは無理だ。間に合わない。貴方は思わず目を瞑る。

貴方の身体を銃弾が貫くことは無かった。彼の方を再度見れば、何度も引き金を引く。しかし、カチッカチッと空虚な音が響くのみ。弾が既に入っていないのか、故障したのかは分からない。だが今ならば、逃げられるかもしれない。一人ならきっと逃げられる。彼女を連れて行くのは難しいだろう。二人で逃げる事を選ぶなら、目の前の男を気絶させなければならない。さて、貴方はどうするだろうか。

 

高松彰吾「……ッ、…持ってきてよかった……。(冨家をそっと地面に下ろすと、小型ナイフを取り出し構える)」

 

高松彰吾 CCB<=50 こぶし(小型ナイフ) (1D100<=50) > 21 > 成功

高松彰吾 1d4 (1D4) > 3

男性「ぐああ…………っ(刺された箇所を押さえてその場に崩れ落ちる)」

 

研究員は気絶をしてしまう。一時的な脅威は過ぎ去った。けれども、彼女は。貴方が冨家に向き直ると彼女は霞んだ瞳で貴方を見る。貴方が彼女に近づけば 冨家は困ったような顔で笑う。

 

冨家のの「……因果応報、ってやつかな、これ。……けが、ない?」

高松彰吾「……、冨家…死ぬな、絶対に死ぬなよ…………(呼びかけながら、救急車を呼ぼうとスマホを取り出す)」

冨家のの「…………ねぇ、あたしさ……彰吾の目の色が、大好きなの。心の中で、あんたを忘れていた時も、愛情を忘れていた時も、あんたの目が世界で一番好きな事だけは変わらなかった。最期に見れて、よかった……っ」

 

冨家が目を閉じる。手の力が抜けていく。貴方は理解してしまう、このまま彼女が死にゆくのをただ見守る事しかできない悔しさと怒りと、何よりの悲しみを。まだ温かい身体が何よりも残酷だろう。貴方の手の中でゆっくり死にゆく彼女を見た貴方はSANc1/1D6

 

高松彰吾「……………は…………、」

高松彰吾 CCB<=40 SANc (1D100<=40) > 52 > 失敗

高松彰吾 1d6 (1D6) > 2

[ 高松彰吾 ] SAN : 40 → 38

 

最後に零れた雫が落ちる。瞳の色を奪っていた灰色のそれが掌に落ちた。その瞬間、灰色が辺りに広がる。やがてそれは 1 箇所に集まっていく。集まって行った先で灰色が柱のように、空中に昇っていく。そして、次第に象られてゆく。一雫が膨れ上がるようにして、それは人間になった。何も無いところから突然生物が生まれたことに驚きSANc0/1

 

高松彰吾 CCB<=38 SANc (1D100<=38) > 88 > 失敗

 [ 高松彰吾 ] SAN : 38 → 37

 

貴方にその生物、いや、人間は話しかけてくる。

???「こんにちは、人間。大変だったね、せっかく目覚めて彼女に逢いに来てこれから幸せになろうなんて話をしてたらこんな事になっちゃってぇ。僕流石に同情しちゃう、嘘だけど」

それは楽しそうに話し始める。目の前の気さくに話しかける青年は、広がり膨れ上がったそれと同じ灰色をしている。まるであの時の鏡の中の自分の様に色が一切無い。

高松彰吾「………………(目の前の存在を呆然と見つめる)」

 

???「僕はぁ…………なんて言うんだろう。神様みたいなものだと思って貰えればいいかな?彼女を取り戻したいんだろう?こんな終わり方、後味悪くて僕もつまんない。それに本当に面白いもの見せてもらったからお礼をしようと思って。どうだろう?彼女はまだ死んでいないようだから、元気にしてあげよう。その中途半端にくすんだ色の目も綺麗にね。だから、最後にもう一つ僕の余興に付き合ってよ(口角を上げ、目を細める)」

 

高松彰吾「…………。…協力する(徐々に落ち着きを取り戻すと、拳を固く握り応答する)」

 

???「いいねぇ、そうでなくちゃ。……もう一度、彼女が記憶を失う番だ。これまでの紆余曲折した日々を全て忘れてしまうこと……そして、君からは『彼女に関する記憶、愛していた記憶』を貰おうか?最初のは良心的だろう?彼女はなんせ、君に嘘をついて付き合っていたんだ。自責の念にいつまでも囚われることから救ってやるんだ。もう一つだって簡単だろう?まぁ実際彼女に関する記憶って事だから、君がさっきまで思い出していたことも少し忘れてしまうけれど、そっちの方がよくない? ……それに、後者の条件は、そこの彼女が君を救う為にやってのけたんだ。あ、もしかして、また僕が何かよからぬものを植え付けようとしてるって思ってる?やだなぁ。もう満足したってば、だから、最後にもう一つって言ったじゃん。それとも周りとの記憶の相違点が不安かな?大丈夫だよ、そこも手直ししてあげるから。彼女の命に比べれば安いもんでしょ?人間の命って儚くて、凄く短命だけどさ。十分でしょ?さぁ、選んでよ。彼女の居ない思い出ある未来か、彼女の居る白紙の未来か」

 

高松彰吾「………………。……そうか、…………そうか…………」

高松彰吾「…………ぬくもりは…もう充分受け取った。…俺たちが本当に……出会うべくして出会ったのなら……、…愛し合うべくして愛し合ったのなら。……もう一度始められる、…かもしれない」

高松彰吾「……冨家が死んだらその可能性も失われるんだろう。…だとすれば答えは決まっている。提案に乗ろう」

 

塵: ありがとう……………………(号泣)

竹: こういうのすき

 

???「……決まりだね。じゃあ、目を瞑って」

神様と名乗った青年がそう言った。貴方は目を閉じる。瞼の裏側で、思い出したばかりの記憶や思い出が綴られる。忘れてしまう。こんなにも温かい、彼女との楽しい日々を。けれども、貴方は選んだのだ。彼女が自分にそうしたように、恩返しをするように。この今日という日の思い出を誰もが忘れてしまうけれど。また、ゼロから始めよう。何度出会っても、何度失っても、きっとまた愛を知る。貴方の意識は、そこで途切れた。

 

次に目を覚ましたのは、病院だった。貴方が目を開ければ、そこには貴方の傍らで座りながら眠っている女性が居た。貴方の気配に気づいたのか彼女の目が開く。

 

???「あ、大丈夫!?」

 

あなたに向けられたのは、聞き覚えがない筈なのに酷く懐かしい声だった。その見知らぬ女性が不安そうにこちらを見ている。貴方がこちらを視認したことに気づき、女性は戸惑いながらも質問をなげかける。

 

???「自分の名前、分かる?」

 

「それはもちろん知っている」と発した。自分は確か、海浜公園に行っていたことを思い出す。いやそれ以外も覚えている。覚えているが、断片的だ。特に最近のことはほとんど虫食いであまりよく覚えていない。隣に誰かいた気がする。不思議な空間に居たような気がする。残酷なものを沢山見た気がする、けれども全てがぼやけている。知らない何者かが映る記憶が、どれもこれも曖昧だ。

 

???「あんたさ、数日前にあたしと海浜公園で倒れている所を見つけられて病院に搬送されたらしくて……ってのも、あたし、実は記憶喪失みたいでここ数カ月の記憶が全ッ然無くて。自分のスマホとか色々見るに、どうやらあたし、あんたと知り合いだったらしいんだけど……。ちなみに、あんたはあたしの事、何か知らない……?」

 

高松彰吾「…………、………………?…(軽く辺りを見回すと自分のスマホを拾い上げ、確認する)」

 

目の前の相手の事が分からない。けれど、曖昧な記憶に響く声と、優しい声と似ている。自身のスマホを見てみると、覚えのない「冨家のの」という人物と頻繁にやり取りしていたことが分かる。

 

高松彰吾「………………。…俺の端末にも残っている。…あんた、冨家ののって名前か?(不可解な現象に眉を顰めながら尋ねる)」

冨家のの「うん!そうそう!一応確認なんだけど、あなたは高松彰吾くんだよね?」

高松彰吾「ああ。…………何故覚えていないんだ……(LINEの頻繁さや楽しげな雰囲気に、顔をしかめ首をかしげる)」

冨家のの「ううーん……やっぱりあんたも覚えてないかぁ……。…………よし!(落胆した様子を見せるも、すぐに高松に向き直り手を取る)」

 

冨家のの「じゃあ……はじめまして!改めて、あたし冨家ののっていいます!記憶喪失者同士、よかったらこれからも仲良くしない?出来る事なら、また、会えたら……って、いきなり目覚めてこんなこと言うのだいぶアレよね」

 

あわあわとする冨家と名乗る女性。面白くて思わず吹き出してしまう。そんな貴方を見て、恥ずかしそうに頭の裏を掻く。すると、病室の入り口が開かれ看護師が貴方を見て驚いた顔をする。よかった、と安堵し医者を呼んでくると再度出て行ってしまった。

 

高松彰吾「…まあ……、…この記録が残っている以上、…俺にとってあんたとの時間は価値のあるものだったんだろう。あんたが俺に構う理由は知らんが……」

冨家のの「……物の価値とか、あたしはもうよく分からないけど…………。まあ話してるうちになんか思い出せるかもしれないしね!」

高松彰吾「ああ、そうだな。よろしく頼む」

冨家のの「あの~あたしはもう退院したんだけど……よければ、お見舞い来ても、いいかな」

高松彰吾「断る理由が無い。…好きな時に来ればいい。どうせ入院中はギターも弾けんしな……」

冨家のの「やった!あ、先生来たら追い出されちゃうし、今日はもう帰るね!……ってわけで、お見舞い行くんで!じゃまた、えっと……たかまっつん!」

 

彼女は颯爽と出て行ってしまう。台風のようなそんな女性に目を丸くしてしまう。彼女の事はもう何も知らないのに、不思議と心が安堵していた。どうして、良かったと思ってしまったのだろう。頭を捻りながら考えていると、担当の医師がやって来た。貴方はそこで発見当時の状況や自身の状態についてを聞く。原因不明の記憶喪失、回復は難しいかもしれないが、驚いたことに脳への損傷は一切見られない。不安ではあるが、健康体だと言う。だが、しばらくは検査をする為入院生活が続くらしい。同じ様に発見された冨家は三日前に目が覚めたようで、貴方が知り合いであることを知ってから貴方の目覚めを寝ずに待っていたらしい。

 

 

高松彰吾「(たかまっつん…………?)」

高松彰吾「(何故……そうまでして……)」

高松彰吾「(何故…………)」

 

(多分次の日)

そして、その彼女は本当に見舞いに来た。彼女は自分の職業や好きなもの、自宅にあった貴方へプレゼントする予定だったらしいオルゴールや、貴方の好みの味付けが書かれたオリジナルレシピブック、日記を持ってきては、一緒に眺めた。

 

冨家のの「たかまっつん来たよ~」

高松彰吾「ああ……。…冨家、か…」

冨家のの「お見舞いって言ったらメロン?とかかな~って思たんだけどぉ……たかまっつん昆布好きそうだったから酢昆布買ってきた!」

高松彰吾「…………!」

高松彰吾「……どんなイメージだ。…まあ正しいが。すごいな…、女の勘か?」

冨家のの「なんか家にレシピ本があってね、これなんだけど……昆布だしとか書いてあったから好きなのかな~って思って(ノートを手渡す)」

 

開いて読んでみると、そこには様々な料理のレシピが書いてある。色ペンやシールを用いてお洒落に描かれたそれはとても可愛らしかった。所々に『隠し味は昆布だし』『たかまっつんはさっぱりめの味付けが好み』『トッピングは塩昆布』など書かれている。

 

高松彰吾「……なるほど。…覚えていないが……、…その、なんだ…。…随分世話になっていたみたいだな。……ありがとう」

冨家のの「まあ、あたしも覚えてないしお互い様ってことで!」

高松彰吾「……料理が好きなのか?」

冨家のの「ん~……めっちゃ得意って訳じゃないんだけどぉ、一人暮らしだしそこそこ作る方?みたいな?」

高松彰吾「概ね俺と似たようなものだな」

高松彰吾「…冨家は何が好きなんだ。俺も家に帰れば情報が残っているのかもしれんが、確認のしようが無くてな」

冨家のの「え、あたし?」

冨家のの「あたしは……チーズとか?よくトッピングするのは」

高松彰吾「…そうか。覚えておこう」

冨家のの「あ!!玉ねぎ嫌いだからそっちの方が覚えといて!!」

高松彰吾「好き嫌いは感心しないな。…ミネストローネとか、ああいう煮込んであるようなやつもダメか?」

冨家のの「う…………だ、だって、臭いんだもん……ちゃんと煮込んであったら、食べられなくはないけど…………」

冨家のの「切るとめちゃくちゃキッチンが玉ねぎ臭くなるから、自分では買ったことないし……お店のは、たまにちょっと臭いが気になるし…………」

高松彰吾「相当嫌いなんだな」

冨家のの「昔からダメなんだよ~、たかまっつんはないの?嫌いなものとか苦手なものとかさ」

高松彰吾「……チョコレート……」

冨家のの「えええっ!?」

高松彰吾「お前と同様匂いも苦手だ。……例の時期は教室中に匂いが充満して……(思い出すと顔を青くし、ため息をつく)」

冨家のの「ああ~……大変そうだね、たかまっつんも…………(同情するように肩に手を置く)」

冨家のの「え、じゃあ貰ったのはどうすんの?」

高松彰吾「………………もらう………………?」

高松彰吾「……俺はくだらん行事には参加しない」

冨家のの「貰わずに断ってるってこと??なんかかわいそ~」

高松彰吾「………………そういうわけではないが……」

 

竹: 陰キャくん泣いてるよ

塵: もうやめてあげなって

竹: 純粋さは時に人を傷つけるんやなって

 

冨家のの「????」

 冨家のの「…………貰ったことないの?(おずおずと尋ねる)」

 

竹: チョコもらえない人なんているわけないもんね

塵: あっ()

竹: やめてあげなって!!!!!

 

高松彰吾「…………渡されないだけだ」

冨家のの「ないのね」

高松彰吾「……冨家は渡されそうだな」

冨家のの「…お?分かっちゃうか~!次のバレンタインにはたかまっつんにも分けてあげるから元気出して!」

高松彰吾「…別に、困ってない……。……困ってないが…………チョコレート以外で頼むぞ」

冨家のの「オッケー!ののちゃんに任せなさい!」

高松彰吾「(暇な奴だな)」

冨家のの「昆布チョコか……(ぼそっ)」

高松彰吾「……昆布が勿体ないだろ。やめろ」

冨家のの「え~」

 

[雑談] 冨家「びっくりしすぎちゃったぁ」

[雑談] 高松「大抵驚かれるからな、仕方ない」

[雑談] 冨家「びっくりポイント14ポイントあげちゃう~」

[雑談] 高松「……貯めたら何かあるのか?」

[雑談] 冨家「くすぐりペナルティがつきます!」

[雑談] 高松「なんだ、ペナルティかよ……」

[雑談] 冨家「10ポイントたまったから脇腹くすぐりの刑!!!!」

[雑談] 高松「一発アウトじゃねえか」

[雑談] 冨家「くらえ~!」

[雑談] 高松「……、…ッ……いや、効かん…………、効かんぞ俺は…………、」

[雑談] 冨家「むっ……強情なやつめ……笑うまでやめないぞ~」

[雑談] 高松「…く、っそ…………、……調子に乗るなよ……!(冨家の腕を押さえ反撃しようとする)」(STRバトルしたい)

[雑談] 塵: STR7 のCON5の間違いだったわ

[雑談] 塵: どうぞ

[雑談] 竹: 高松が13だから80以下で成功か

[雑談] 塵: un

[雑談] 高松 CCB<=80 (1D100<=80) > 18 > 成功

[雑談] 竹: 出目がいい、むだに

[雑談] 冨家「……え、ひゃあっ!」

[雑談] 高松「……ほう、随分敏感だな?」

[雑談] 竹: まって攻め様みたいになっちゃった、ちがくて

[雑談] 塵: (*^^*)

[雑談] 冨家「急にびっくりするでしょっ……、びっくりポイント10追加!!」

[雑談] 高松「一方的なのはフェアじゃないだろ」

[雑談] 冨家「あたしはポイント貯まってないもん!」

[雑談] 高松「お前にいきなり擽られてポイントが貯まった」

[雑談] 冨家「う~……たかまっつんもう20ポイント貯まったんだからね!!」

 

[雑談] 竹: みけちゃんが帰って2時間くらいたってから、(くれるのか…)ってなってる 高松

[雑談] 冨家のの「あげちゃう~」

 

そんな日々が貴方達を、再び友人関係に戻してくれた。退院する頃にはすっかり仲が深まっていた。そして退院から数日、今日は貴方の家に彼女が来ている。

 

冨家のの「思ったより整理整頓されてる~」

高松彰吾「寛いでくれてかまわんが、楽器には触るなよ。…ウーロン茶でいいな(キッチンに向かう)」

冨家のの「は~い(キッチンについていく)」

高松彰吾「何故ついてくる…。

冨家のの「え?ん~そこそこ作るって言ってたから、キッチンどんな感じなのかな~って思って」

高松彰吾「手の込んだものは作らんからな、…そんなに物珍しいもんは無いだろ(コップにウーロン茶を注ぎながら応答する)」

冨家のの「え~そうかなぁ?(きょろきょろとキッチンを見回す)」

 

冨家のの CCB<=70 目星 (1D100<=70) > 17 > 成功

竹: 根菜類がまとめられている箱の隅から、芽の出たジャガイモを発見する。

 

冨家のの「あ、じゃがいも発見~(芽が出たじゃがいもを高々と持ち上げる)」

高松彰吾「っ……、…………入院前に買ったものを捨て忘れたんだろう」

冨家のの「 : これ埋めたらじゃがいもできるかなぁ?」

高松彰吾「そう思うなら試してみればいい。…お前の庭でな」

冨家のの「やった~お土産ゲット~!」

高松彰吾「嬉しいのか…(テーブルにウーロン茶を運ぶ)」

冨家のの「たかまっつんポテトできたら報告するね~(じゃがいもを撫でながら高松についていく)」

高松彰吾「ああ。できるといいな」

冨家のの「うん!」

 

貴方達が楽しく話していると、インターホンが鳴る。出ると、それは宅配便の様で少し大きめの箱を受け取る。差出人は……『メモリーダイブ関係者一同』と書かれている。そしてその下に『お礼の品、遅くなり申し訳ありません』と一言。

 

高松彰吾「メモリーダイブ……?…宛先ミスか?」

冨家のの「開けてみよーよ」

高松彰吾「いいのか……?」

高松彰吾「(迷いながらも渋々開ける)」

冨家のの「わくわく」

 

箱を開けると水彩絵の具セットが入っている。普通のものでは無い。かなり品質が優れているものだろう。しかも、見た事のない色までもが仕舞われている。普通こんな絵の具の色はないだろう。いや、自分が知らないだけだろうか。そして、箱の奥に丁寧に仕舞われたそれを取り出せば、そこには自分と冨家が描かれたキャンバスがある。写真の様なその繊細な色使いの中に、一つ気になるものがある。冨家の目の色が薄い灰色だった。

 

冨家のの「えー、なんであたしの目だけ灰色なのよう(唇を尖らせる)」

高松彰吾「…………宛先ミスではなさそうだな」

高松彰吾「……誰だか知らんが、よく描けているんじゃないか。色のミスだけ惜しいが…」

冨家のの「そうね、たしかにめっちゃ上手じゃん!……あぁ、そっか!(箱の中を漁り始める)」

冨家のの「これ、自分で塗れってことでしょ!?ね、たかまっつん!塗って塗って!あたしの目の色!!(腕の中いっぱいに絵の具セットや筆を持って高松に近づく)」

高松彰吾「俺がか……!?…構わんが……クオリティは保証せんぞ……」

冨家のの「やった!」

 

あなたは渋々そのまま絵の具セットを受け取った。無限にある色の絵の具を眺めていると、冨家が貴方の顔と絵の具を交互に見つめる。

高松彰吾「(そわ)」

冨家のの「こっちがたかまっつんの目の色……いや、でもこっちかな……うーん……(顔を顰めて似た色の絵の具を吟味する)」

 

そして彼女の目に一つの絵の具が留まったようで、目を輝かせながら「あった!」と言い、それを持って貴方の前に差し出した。目を細めてはにかむ彼女の白い歯が見えた。

 

冨家のの「あたし、たかまっつんの目の色凄く綺麗だな、って思ってて。この色は、彰吾だけの色。大好きなんだ。………あれ、初めて伝えた筈なのに、なんか前もこんなこと言ったような……てか今あたし彰吾って言った!?(慈しむように絵の具を見つめた後、はっとして顔を赤らめる)」

高松彰吾「…急になんだ……。…記憶に無いだけで、過去にも似たような会話をしたんじゃないか。…そうだな……、…冨家の目も印象的だ、と…思う…」

冨家のの「そ、そうかも……いやでも距離近すぎでしょ!あたしたち!え…………あ~……あ、ありがと…………(恥ずかしそうに声をすぼめる)」

高松彰吾「……言われてみれば、まあ…近いかもしれんが…………、…覚えてないからな」

 

貴方だけの色が手渡される。これは貴方が取り戻した色。過去も現実も未来も、変わらずある貴方だけの色。微笑む彼女の目に貴方が映る。貴方が取り戻した色がそこにある。貴方が思い出した彼女の瞳の色がそこにある。こんなにも綺麗だったのだろうか。あの時は気づかなかったけれど。紛れもなく、この色も彼女だけのものだ。とはいえ、それを貴方自身が知ることはこの先無いのだろう。

 

 冨家のの「……っほ、ほら、今度はあたしの目の色探して!(自身の目を指さしてはにかむ)

高松彰吾「…冨家の目は…………、…明るい黄色…いやオレンジ?…ただの黄色よりはあたたかみがあるか…?(ぶつぶつと悩みながら、絵具を選定し始める)」

 

世界は色で溢れている。赤や青、黄や緑、紫に桃に、灰に白に黒。当たり前だったはずの世界はそんな何気ない、色と言う要素一つでこんなにも変わった。だからこそ、貴方は知ることができた。世界は、彼女は、貴方は、あの日の出来事を忘れてしまったけれど、それでも貴方は前へと歩き出す。目の前に広がるそれは、彩られた世界だった。鮮明に、色味豊にかに。貴方は散らばる絵の具から探す、彼女の色を。この世界を彩ってくれた、彼女の色を。

 

シナリオクリアです。おめでとうございます。

END『イロ-ドリ』彩り 両生還

 

生還報酬

SAN 回復 1D10+3

高松彰吾 1d10 (1D10) > 10

[ 高松彰吾 ] SAN : 37 → 50

 

技能成長

目星 1D6

高松彰吾 1d6 (1D6) > 6

 

AF:色彩豊かな絵画

とある種族が送った貴方たちの幸せだった思い出を象った品。覚えていないが、きっと幸せだったのだろう。顔を見ればわかる。繊細なタッチで描かれており、遠くから見れば写真と見間違えそうだ。これがあると、なんだか前に進めそうな気がする。幸運に+5