【CoCセッション】イロドリ

その2

〈誰かの部屋〉

扉を開ければそこは、生活感のある部屋だった。まるで、誰かの自室のような。机の上には様々な資料やファイルが散乱しているように見える。いや、床にも紙が大量に散乱している。この部屋もやはり、白黒である。

《探索可能箇所》床、本棚、机、扉

 

高松彰吾「きたねえな…(しゃがみ込み、床に目をやる)」

床 : 床に、A4 の紙が散らばっている。

 

目星が振れます。

高松彰吾 CCB<=50 目星 (1D100<=50) > 47 > 成功

 

一枚だけ奇妙な怪文書のようなものを見つけることが出来る。

『散らばる記憶の中に真実がある』

 

高松彰吾「真実……」

高松彰吾「(机を見る)」

〈机〉

机にはファイルが散乱している。大体が心理や記憶、感情、人間について記されているものだ。

 

目星が振れます。

高松彰吾 CCB<=50 目星 (1D100<=50) > 82 > 失敗

 

高松彰吾「(あまり興味ないな…)」

冨家のの「めっちゃ汚いじゃん」

高松彰吾「…これだけ散乱していては情報としても扱いづらいと思うがな」

冨家のの「(机ごそごそ)」

 

高松彰吾「(本棚を見る)」

〈本棚〉

本棚には様々な本が収納されている。

 

図書館が振れます。

高松彰吾「冨家、何か見つかったのか」

 

冨家のの SCCB<=70 目星 (1D100<=70) > 71 > 失敗

冨家のの「正直、すまんかった」

 

冨家のの「紙飛行機!作ってみた!これめっちゃ飛ぶんだよ」

高松彰吾「…………」

高松彰吾「…………(ぽかんと口を開いた後、はーっと息を吐き首を横に振る)」

冨家のの「え、何……?」

高松彰吾「緊張感の欠片もないな。俺の記憶は遊びじゃないんだぞ…全く…」

高松彰吾「…それで、どれだけ飛ぶんだ。見せてみろ」

冨家のの「 : マジでめっちゃ飛ぶからねこの折り方は!」

 

冨家のの CCB<=50 投擲 (1D100<=50) > 89 > 失敗

冨家のの「あああ!!」

高松彰吾「……、…紙質が悪かったことにしておいてやる」

冨家のの「優しい~」

 

高松彰吾 CCB<=75 図書館 (1D100<=75) > 47 > 成功

 

トラウマについて纏められたノートを見つけることが出来た。

〈心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは〉

原因となった出来事の記憶が繰り返しよみがえり、強烈な恐怖感、無力感などに支配される。原因となった出来事を思い出させるきっかけに触れると、つらい記憶が突然鮮明によみがえる「フラッシュバック」が起こる。記憶がよみがえるだけではなく、実際にその出来事を再び体験しているような感覚に陥り、周囲の状況を認識できなくなることも。

 

ノートに目星が振れます。

高松彰吾 CCB<=50 目星 (1D100<=50) > 23 > 成功

 

ノートの最後のページに文字が記されている。

〈研究員の追記〉

記憶やフラッシュバックの操作、非現実的な体験、或いは我々の人智を超えた存在との邂逅により、精神に負荷を与える事が可能だ。アイツらを利用するのは難しい。私たちにも危険が及ぶ。だとすれば、人為的に作り出す極限状態が今のところの限界点だろう。段階を踏んで成果を記録しよう。

 

高松彰吾「…実験みてえだな」

 

高松彰吾「(扉を見てみる)」

〈扉〉

固く閉ざされている扉だ。何をしても開くことは無い。扉にはプレートがかかっており文字が刻まれている。

『絵に描いた悪魔を恐がるのは子供の眼』

 

目星が振れます。

高松彰吾 CCB<=50 目星 (1D100<=50) > 60 > 失敗

高松彰吾「先ほどから随分回りくどいな(イライラ)」

冨家のの「まあまあそんなカリカリしないで~たかまっつんも紙飛行機作る??」

高松彰吾「紙質が悪いのにか?」

冨家のの「今度はいい紙選ぶから!!」

高松彰吾「俺の分も探しておいてくれ」

冨家のの「たかまっつんのはこれ!さっき読んでたから!(怪文書を渡してくる)」

高松彰吾「紙質で選ぶんじゃなかったのか…。(文句を言いながらも折り始める)」

 

紙飛行機を折り始めてすぐに、裏面にも何か書かれていることに気づく。

『愛情の裏返しとは何だろうか』

 

高松彰吾「(怪文書の裏に怪文書を書くな怒怒怒)」

冨家のの「こっちのファイルの紙の方が紙質が……?」

 

冨家のの SCCB<=70 目星 (1D100<=70) > 90 > 失敗

冨家のの「すまんかった」

 

冨家のの「この紙だー!(爆速で紙飛行機を折り始める)

高松彰吾「…おい、俺にもその紙をよこせ…」

 

高松彰吾 CCB<=50 目星 (1D100<=50) > 8 > スペシャル

 

黒凪研究室と表に書かれた日記のようなものを見つけることが出来る。

〈黒凪研究室-日記-〉

○月×日

ここの施設の人間はイカれている。だが、確かに研究とはイカれていなければ究明することが難しいのだろう。俺もなんだか、最近は被検体をどうこうするのに抵抗が無くなった。良いのかなぁ、これで。そういえば、トラウマに関する研究で利用した人間が昨日からやけにやかましい。過度な恐怖を与えすぎてしまったのだろう。これじゃあ、他の研究が出来やしない。……早めに片付けておこう。

○月×日

とりあえず処理はした。もう少し人間が必要だ。今度は勝負事に強い年配者にしよう。被検体が耐えきれないのなら意味が無い。

○月×日

子供の居る母親は比較的しぶとかった。だが、子供の話を出した途端一変した。他者の為に必死になり、自身をも犠牲にするらしい。愛情だと言っては見たが、無視をされた。上はやはり心が壊れている……いや、既にそんなものは無いのだろう。

(ページが一枚破かれている)

○月×日

やはり、精神力の高い老人も中々にしぶとい。勝負事には強いらしく、いい研究データが取れた。そうだ。でもまだ、足りない。人間が何処まで耐え抜くことが出来るのか。やはり我々の技術では及ばない物もある。そういえば、あの種族も虹山市を拠点としているのだという。なるほど、そうか。その手もあるな。

○月×日

ハイドを使った。中々に良好な被検体のようで、今後の成果如何では研究データもかなり期待できそうだ。別の話だが、例の種族の研究所を突き止めた。いや、あれは研究所と言うよりはまた別の世界なのだろうか。分からないが何にせよ、彼女処に我々の知り得ない知識がある。あぁ、気になってしょうがない。

〇月×日

新たな被検体だが、面白いデータが取れそうだ。前々から気になっていた想定予測データの検証もしたい。ハイドには、被検体を殺してもらうことにしよう。もちろん殺すまでの過程もしっかり記録をしなければ。

〇月×日

まずい。これはまずい。バレた。奴らの、奴らが。いや、何を記せばいい。一体何を記せばいいんだ。あと少しなんだ。どうしたらいい。今日の研究で、また新たに究明できることがあるのに。彼女奴らは。それに、あの実験もまずい。このデータを見ているとおかしくなる。けれど、ダメだ。見たい。もっと、しりたくなる。

 

それ以降は奇妙な文字羅列がびっしり敷き詰められている。気味が悪い。SANc1/1D3

 

高松彰吾 CCB<=48 SANc (1D100<=48) > 54 > 失敗

高松彰吾 1d3 (1D3) > 3

[ 高松彰吾 ] SAN : 48 → 45

 

高松彰吾「ッ…………。(日記を開くと手を止め、しばし固まる)」

冨家のの「いい紙あった~?」

高松彰吾「……あまり…見ない方がいいかもしれん、これは…」

冨家のの「え、怖いヤツ!?」

高松彰吾「怖いやつだ、多分」

冨家のの「やめとこ~」

 

【映像】

頭の中に、映像が流れこんでくる。きっと、自分が失っていた記憶の一部。冨家の事だろうか、或いは自身の身に起こった出来事だろうか。知るのが少しだけ怖い。けれども、貴方の意思に反して記憶は巡る。思い出は綴る。

貴方は気がつくと、暗い地下室のような場所に居た。ここは何処だろう、いや、ここは。貴方は思い出す。貴方は海浜公園を散歩していた際に誘拐されたらしい。らしい、と他人事の様になってしまうのは記憶が錯乱しているから。ふと、貴方の背後で小さな弱々しい溜め息が聞こえた。振り向けば、清楚な雰囲気と制服を身に纏う女性が居た。

 

JK「お父様とお母様がきっと心配しているわ。……早く、家族に会いたい。……あぁ、ごめんなさい。貴方様も不安ですのに、こんな弱気な言葉……。こんなにも大切な人が恋しくて堪らない」

 

寂しいという言葉では言い表せないほど、彼女は自らの身体を抱き締めるように膝を抱えて震えている。丁寧な口調や上品な制服から伺えるのは彼女が余程このような薄汚い場所とは無縁であったこと。憔悴しきった子犬のように目を伏せ震える彼女に、貴方はどうするだろうか。

 

高松彰吾「(女か…)」

JK「……少しだけ手を握らせて下さい、見ず知らずの人にこんなことを頼むなんて、本当に失礼なのですけれど……お願いします、怖くて、堪らないんです」

高松彰吾「……勝手にしろ」

JK「あり、がとうござ、います……あぁ、温かい……」

 

彼女は、貴方の手を弱い力で握って泣き出した。伝わる体温は、少し冷たいけれど、脈打つそれは確かに彼女が生きている事を実感させる。涙も、声も、その鼓動も、彼女の生は確かにここにある。けれども、この命すらも、もう残り時間が無いように感じた。早く、こんな場所からでなければ。彼女が弱々しく「お父様、お母様」と名前を呼ぶ。彼女が愛する、大切な人だろう。ふと、貴方の脳裏に浮かんだのは、冨家の顔……だったかもしれない。誰か、助けに来て欲しい。ここに居るとおかしくなる。貴方がそう思っている矢先、背後でケラケラと笑う声が響く。

 

???「いいねぇ、心身ともにぐっちゃぐちゃってわけだ。けど、大事な人が居るからってそんな 曖昧なものにしがみつくだけでも生きていけるんだなぁ?実に愉快だ。アンタには大事な人がいるのか?そいつの為なら何でもできるのか、頑張れるのか?(滑稽だと言うように笑う)」

???「何も覚えてなくて何も知らないのは、楽でいいよなぁ?」

 

と、その時。貴方は激しい頭痛に襲われる。両手で頭を抑えて、痛みに耐えようとする。脳内から刺激するようにズキズキと痛む。記憶が、巡る。貴方は、知る。知らなければならない。目を開けるとそこは、さきほどの地下室。

しかし、そこには先程は無かったものが目に入る。人間だ。いや、果たしてそれを人間と呼んでいいのか分からない。それは身体こそ原型を留めているが、顔が潰れた異形のものであった。そんな得体の知れない肉塊が複数体転がる。後退りをすれば、貴方の足に当たる物がひとつ。それは純白の制服を身に纏う女性の身体だった。純白というのは、記憶に焼き付いたそれであって、今はその面影すらない。血液が純潔を汚す様はあまりにもおぞましい。そして、その傍らの和服を纏う男性は奇跡的に顔が残っている。目は虚ろで、その瞳にはもう何も映さない。地下室の物足りない白黒が途端、赤に染まる。鮮やかさなんて、これっぽっちも無かったのに。それは、彩られた世界だった。

これまで、普通に話していた名も知らぬ人間が無惨な肉塊となった猟奇的な惨状を目にした貴方はSANc1d3/1d6

 

高松彰吾 CCB<=45 SANc (1D100<=45) > 81 > 失敗

高松彰吾 1d6 (1D6) > 4

[ 高松彰吾 ] SAN : 45 → 41

 

高松彰吾「…………何故……こんな……、」

 

普通に暮らしていただけなのに。どうして、こんなに苦しまなくてはならないのだろう。この人達が何をしたという。自分が何をしたというのだ。理不尽な運命に嘆きながら、貴方の視界は暗転していく。

1D100を振ってください。

高松彰吾 1d100 (1D100) > 27

 

目を覚ますとそこは真っ白な部屋であった。先ほどまでの家具はない。ただ一つ、扉があるのみ。

 

高松彰吾「(冨家の姿はあるか確かめようと、辺りを見回す)」

冨家のの「またなんか見えた?」

高松彰吾「……ああ。…おそらく誘拐された後の…、…………惨状を見た」

冨家のの「そう…………」

高松彰吾「……部屋の様子が随分変わったな」

冨家のの「そうね~、もうここで思い出すべきことはないんでしょ」

高松彰吾「そうか…(扉に向かう)」

 

扉にかかったプレートの文字が変わっている。見ればそこには『あと、もう一色』と書かれている。

 

高松彰吾「(もう1色……)」

高松彰吾「(開ける)」

 

〈最後の部屋〉

そこは見覚えのある場所だった。これまで通ってきた……のではなく、記憶を思い出した時に流れ込んできた映像の場所、海と隣接している海浜公園だった。砂浜に隣接した散歩道のような場所には季節の花々が咲き乱れている。浜辺もそう遠くない。貴方の足は不思議と海へ向かうだろう。先ほどまで居た部屋ではない、広大な海が貴方を待ち受けている。海には景色に似合わずの木製のローテーブルが浜辺にあるだろう。

《探索可能箇所》机、花束、黒いカード、海

 

高松彰吾「……懐かしい場所だ。記憶と異なる部分もあるが…」

 

高松彰吾「(机を見る)」

〈机〉

机の上には塗り絵がある。傍らには色鉛筆がある。一部の色は何色か分からないがかろうじて、赤、青、黄、緑、はちみつ色の色鉛筆がある。

 

〈DEX*5〉もしくは〈芸術(絵画等)+30〉で塗れます。

高松彰吾 CCB<=80 DEX×5 (1D100<=80) > 37 > 成功

 

塗り終えると、色が塗られていないところに奇妙な違和感を覚える。

貴方は綺麗に塗ることができ、『物には思念が宿る。記憶が染み付く。思い出の象徴である』という言葉が浮き上がるのが分かると同時にしっかり読める。

 

高松彰吾「(また怪文書かよ)」

 

高松彰吾「(花束を見る)」

〈花束〉

綺麗な花束がある。メッセージカードが一緒に付いており、『誕生日おめでとう 2月5日』と書かれている。

 

カードにアイデアが振れます。

高松彰吾 CCB<=80 カードにアイデア (1D100<=80) > 55 > 成功

これは冨家の誕生日ではないかと思い出す。

 

花束に〈生物学(+20)〉、〈知識〉、〈アイデア〉で同じ情報が出ます。

高松彰吾 CCB<=80 花束にアイデア (1D100<=80) > 71 > 成功

あなたは花束の中にある、花言葉と花の名前を思い出す。

シオン…花言葉【追憶】【君を忘れない】【遠方にある人を思う】

 

高松彰吾「……冨家の誕生日だ…。ここで祝ったのか」

冨家のの「え、あーそれね……。お花とか、見慣れてるって思ってたんだけど、あんな恥ずかしいなんて思わなかった……」

高松彰吾「……………………俺もだ」

 

高松彰吾「(黒いカードを見る)」

〈黒いカード〉

白く細い文字で 『愛情も殺意も似たようなものだろう?だから君たちの世界には、愛憎なんて言葉があるんだ。これは僕からの代替品。壊れやすいから気をつけてね』と書かれている。

 

高松彰吾「(怪文書をやめろ怒怒怒)」

 

冨家のの 怪文書ってことは~?

 

高松彰吾「(裏を見る)」

裏を見ると、『記憶って精神的ショックで戻るんだって。面白いね』と書かれている。

 

高松彰吾「(なるほど(?))」

高松彰吾「(海に向かう)」

 

〈海〉

何処までも続く広い海だ。風が吹いていないのにも関わらず、波は寄せて返している。白黒の空と反対に、太陽の光で反射して煌めく海は鮮やかな青色である。

 

目星が振れます。

高松彰吾 CCB<=50 目星 (1D100<=50) > 39 > 成功

 

小さなガラスの箱を見つけることが出来る。

 

高松彰吾「……?(箱を手に取る)」

中には日記が入っているようだ。

高松彰吾「(日記を開く)」

 

〈日記〉

〇月×日

今日は海浜公園に市内の未来館で働く職員が開催するイベントがある。たかまっつんと行けるのがめっちゃ楽しみ。たまには童心に帰るのも悪くないよね。そうだ、帰りにいつものカフェに行こう。仕事の事は忘れてはいけないけれど……でも、今だけは忘れてあいつと向き合える。幸せだ。たかまっつんとは、どんな形であれ出会えて良かったと思う。

〇月×日

たまには、一緒に映画に行くのはどうかな。そう思ってつい昨日、映画の座席チケットを予約しちゃった……。恋愛モノは嫌がるかな。流行りのアニメとか、洋画の方が良かったかな。少しずつ、あいつと居る時間の自分が我儘になってく。気を緩めて甘えちゃうのは、迷惑じゃないかな。明日、映画について聞いてみよう。

 

これ以降も楽しげに貴方との思い出が連ねられている。

 

覚束ない記憶では、これら全てを懐かしむことは出来なかった。それが少しだけ寂しいけれど、けれどもかつての自分と冨家にはこんな素敵な思い出があったのだと知る。それだけで、貴方の心はじんと温まる。ふと、最後のページに何かが挟まっている。

 

『レインボーパーク 入場ペアチケット』貴方はこの場所の記憶が薄っすらと蘇る。それは、虹山市にある有名な大型テーマパークのチケットである。

 

冨家のの これは怪文書じゃないけど~

 

高松彰吾「(これは読んでいいものなのか…?)」

高松彰吾「(チケットを裏返す)」

裏には『思い出は、時の流れによって寄せて返すものなのだ』と書かれている。

 

高松彰吾「(なるほど(?))」

冨家のの「どう?記憶は戻った?(高松の様子を窺いながら、少しだけ不安そうに問いかける)」

 

ここまで、随分とハードなものを見てきた。実感が沸かないが、あれはきっと真実なのだろう。どれもこれも自身の心の中だと呼ばれるこの世界で見たことだ。

 

高松彰吾「……色々と。…ただ、肝心な部分が抜けている…。…誘拐されて、火事があって、ここにいる…それらが繋がらない。俺がどうしてここにいるのか分からない」

 

アナウンス「メモリーダイブ限界時間です。残り10分で治療者の強制ダイブアウトを行います。残りの時間まで、どうぞ素敵なお時間をお過ごし下さいませ」

 

冨家のの「うん。話さなくちゃね、全部。といっても、あたしも知ってることは少ないけど……。たかまっつんは、実験の被験者としてとある研究員によって誘拐されて、トラウマを植え付けるっていう実験に巻き込まれてしまった。あんたは研究の中でどんどん心が疲弊して、そんな中同じ様に誘拐された人間の無残な死に様を目撃してしまう……。たかまっつんの心は限界を迎えてた。そして、事件は起きた。幸いにも一命はとりとめたけど、誘拐されたこととか事件による精神的な疲労感とかであんたは全く目を覚まさなくなったのね。んで、一カ月がたった頃に、あたしはこのメモリーダイブシステムを紹介されました……っとこんな感じかな。あんなこと思い出したら、あんたは目覚める事を拒むかもしれない。何の前触れもなく訪れた最期をどんな風に感じるのか。……あたしはあんたに苦しんでほしくはない。でも、それでも、あんたに会いたかった、だからここまで来た(目に涙を浮かべる)」

 

高松彰吾「……最期……?…どういうことだ。……まだ俺には知らないことがあるんだろう?……全部は話せないのか」

 

アナウンス「間もなくメモリーダイブ限界時間です」

 

冨家のの「うん…………でももう時間が無いみたい……。あたしが出来ることは全部やったつもり」

冨家のの「最後にさ、今日ここでまた会えた証みたいな?そういう感じで……握手、してくれる?(高松に手を差し出す)」

 

高松彰吾「……なんだ……、…不穏だな。…………時間がないなら仕方ない。(嫌な予感に汗を滲ませつつも、口角を上げる)」

高松彰吾「……冨家、…ありがとな。(冨家の手を握る)」

 

貴方が手を取ろうとした途端、その手は振り払われる。何が起こったのか分からない貴方に、冨家が口を開く。

 

冨家のの「……なんてな」

声色が変わる。一等優しかった筈のそれが、途端に冷たくなる。そして、光のない瞳が貴方を射すくめる。

冨家のの「俺の負けだな。本当に、しぶといねぇ」

高松彰吾「な…………」

 

立ち尽くす貴方。鳴り止まない警告音。淡々と言葉を吐く冨家。貴方を見つめて、薄く笑う。

アナウンス「3、2、1、0。治療者のダイブアウトを開始します」

 

冨家のの「初めまして、高松彰吾。ハイド、それが俺のもう一つの呼び名だ」

 

眩い光が視界を奪う。貴方は思わず目を瞑る。一瞬、冨家と目が合ったそんな気がした。何処か、物寂しそうな瞳を、貴方は見たような気がした。光に目が慣れて、ゆっくり瞼を開けば、そこは最初のリビングのような部屋だった。貴方は辺りを見渡す。冨家はいない。その代わり、手紙のようなものが落ちている。

 

高松彰吾「……ハイド……、…そうか……」

高松彰吾「(手紙を拾う)」

 

〈手紙〉

たかまっつん、いや、高松彰吾

俺が本当の名前を名乗らなかった時の為に、この手紙を残しておく。今お前がこれを読んでいるということは、時間切れでやり損ねたんだろう。俺はお前を誘拐した犯人、世間が作り上げたハイドだ。俺のやるべきことは、実験で用済みになったお前を殺すこと。殺し損ねたとあっちゃクライアントに示しがつかない。だから、メモリーダイブを使って内側から記憶を思い出させてお前を壊すことにした。だけど、お前は記憶を取り戻しても尚、それでも平常で居られた。それは、紛れもなくお前の強さだ。そんな人間早々会えたもんじゃない。少しの間だが、そんなお前と触れ合えた事を嬉しく思う。

さて、俺はもう嘘つくのもやめにする。聞きたいこととか言いたいこととかやりたいことがあるんだろ、だったらあの場所で待ってるから。会いたくねえならそれでも構わねえ。好きにしろ。

最後に一つ。どこまでいってもお前はただのターゲットだ。そこに、それ以上の感情なんてない。もちろん、愛情も。

冨家

 

手紙に書かれた言葉。彼女が、自分を殺そうとしていたこと、貴方はもしかしたら心のどこかで感じていたかもしれない。いや、ただ純粋に彼女の優しさに安堵していたかもしれない。それでも優しかった彼女の姿とこの手紙を同時に受け入れるのは、難しいだろう。SANc0/1

 

高松彰吾 CCB<=41 SANc (1D100<=41) > 99 > 致命的失敗

[ 高松彰吾 ] SAN : 41 → 40

 

〈最後の部屋〉

色を取り戻した綺麗な空間に拍手がこだまする。振り向けばそこには、あの地下室で出会った女性が立っていた。しかし、その格好は少しだけ異なる。純白の制服の上に白衣を纏っている。加えて、その笑みも清楚と言うよりかはどこか胡散臭い。

 

高松彰吾「(女か)」

女性「記憶の旅は如何でしたか?貴方の思い出したい事から思い出したくない事まで、巡ることが出来たと思います。お陰で、世界はこんなにも色付いた。これが貴方の記憶、軌跡……紛れもない真実です。色付くとそれは本当に綺麗に見える。ですが、時には色付いて初めて残酷なものであると知ることもある。さて、お話をしましょう。貴方と冨家のの「について、そして私達の種族のことを。その前に聞きたいことがあるのでは無いですか?だいぶ混乱なさっているようですし」

高松彰吾「……いや、思いつかないな。まだ疑わしいことが多すぎるし…。まずお前から説明しろ」

 

女性「では、まずは私共のお話をしましょう。我々は精神転移を繰り返し、人間の知識の研究と並行して記憶についての研究を行っていました。その成果によって、メモリーダイブシステムを開発しました。我々は、メモリーダイブを利用して様々な人間の記憶や知識のあり方を観測していましたが、そんな最中我々の真似事をする人間が現れました。取るに足らない者達でしたが、研究資料を一つ彼らに盗まれましてね……まぁ、幸い彼らが理解し得ない文献でしたので何もこちらに害はありませんし、手荒な事は私たちは好みませんので……しかし丁度いいタイミングでした。拠点である場所へと向かえば、件の誘拐事件の人間は皆、そこに居た。勿論、貴方もね。恐怖を主とした人間の精神についての研究を展開していた彼らは、貴方と冨家ののを観測する為に家屋に火を放ちました。ですが、彼ら研究員の中に幻覚症状に見舞われていた者が居たらしく誤って彼らの退路すらも炎は奪ってしまった。滑稽でしたよ、恐怖に顔を歪ませる彼らはやはり人間でした。私が助ける筋合いはありませんけど……誰もが恐怖する中、たった一人家屋の中に飛び込もうとする人間がいらっしゃいました。それが冨家さんです。危ないですよ、と声を掛けたんですけどね……あまりにも面白くて、興味深くて、つい助力をしてしまいました。彼女によって早めに呼ばれていた消防の方々によって、家屋は無事鎮火。貴方は幸いにも一命を取りとめて生還しました。意識不明の貴方に彼女は並々ならぬ罪悪感を感じていたようですねぇ。毎日、お見舞いに行って……混濁した意識で、もう目覚めないかもしれないと診断された旨を聞き、こちらからメモリーダイブを紹介しました。とある条件を承諾してね。メモリーダイブは言わば真っ白なキャンバスに色を付ける作業です。塗り絵みたいなものではありますが……人間の摂理として0から1を生み出すのは血が滲む努力が必要でしょう。一朝一夕で記憶回復なんて、何だか割に合わないので私達も少しだけ観測をさせて頂こうと考えました。記憶を取り戻す為のチャンスは、記憶で支払ってもらう事にしました。貴方を愛していた記憶を代償に。ですが……いくら愛していた記憶を失ったとはいえ、あの様に本当にあなたを殺そうとしますかねぇ。私には皆目見当もつかないなぁ。ほんと、どうしてでしょうね」

 

高松彰吾「…………、…冨家……」

女性「さて、貴方にはここで選ぶ権利がある。このまま目を覚ますか、否か……もちろん、記憶を消して目覚めることも出来ますよ、辛い現実からは目を背けたいですものね。出来ることならこんな理不尽忘れて、新しい生活に踏み出すのも悪くは無い。……我々は患者様第一ですので、貴方のやりたいことを」

 

高松彰吾「帰る。…冨家が待っている」

貴方がその決断をすれば、女性は薄く微笑む。この世界は最初に来たよりも随分色づいている。若草色の手帳の他に、窓から見える青空。その先に見える海。あの場所はあんなにも美しかったのだろうか。知らなかった。忘れていた。

と、その時、けたたましい警告音が鳴り響く。耳が痛い。吐き気がする。

女性「おっと、少々独断で話し過ぎたようですね。上からの警告でしょうか……あぁ、いや寧ろこれは貴方自身からの警告のようですね。やはり、真新しい記憶を与えすぎてしまうと身体に負荷がかかるらしい、勉強になりました。最後に少し、気張ってくださいね……きちんと目覚めた時は改めてお詫びをしますね」

 

幸運を振ってください。

高松彰吾 CCB<=50 幸運 (1D100<=50) > 98 > 致命的失敗

 

貴方はゆっくりと目を覚ます。そこは、懐かしさを覚える見慣れた天井。自室のベッドの上だった。むくりと起き上がり、ふと窓に目を向ける。空は橙色と淡い薄紫色が溶けあう夕方の景色であった。眩しい、色の世界……現実に貴方は帰って来たのだ。何をするために。何にせよ貴方は自分自身の記憶や苦しみに耐え抜き、目覚めることが出来た。これより先はもうあの無機質なアナウンスを聞く必要がないのだ。さて、この夕暮れの中で貴方はどうするだろうか。

 

高松彰吾「(海浜公園に向かう)」(一応折り畳み式の小型ナイフを持っていく)

 

貴方の足は何処へ向かうだろう。ベッドから起き上がる時、ふと貴方は自分枕元に置かれているものに気付く。それはレインボーパークチケットの残骸のようなものである。破れてしまって、紙片が残るのみである。思い出が一つ消えた、それが堪らなく悲しくなった。

 

高松彰吾「(拾い上げてポケットに入れる)」