【CoCセッション】天使になっちゃった!


その2(後日談)

七宮遥琉
(ベッドの中から玄野を見つめて微笑んでいる)
玄野 光
…………遥琉、仕事には行けるかい。体調が悪いなら、無理はしない方がいいけれど……起きられるかい?(ベッドから出るのを手伝おうと手を差し出す)
七宮遥琉
…………。(僅かに首を傾げる。手は取らない)
玄野 光
私とは話したくないかい。現場でその状態だと困るんだけど、……とにかくご飯は食べないと。よいしょっ……(自嘲気味に俯くと、七宮をベッドから引きずり出す)
七宮遥琉
…………(引っ張られた手を見ると小さく頷き、食卓に向かって歩く)
玄野 光
はい、とりあえず食べていて。幸い今日は休憩時間が多めだから、なんとか乗り切ろう。明日からの事は……今日の君を見てから考えるよ(七宮の目の前に皿を置くと準備のために自室に向かう)
七宮遥琉
…いただきます。(手を合わせると黙々と食べ進める)
玄野 光
食べた?うん、食べたね偉い。じゃあもう行こう。はいこれ今日の収録内容、もう読んでいると思うけど行きながらざっくり確認しておいて(七宮に台本を持たせて車に乗せる)
七宮遥琉
…………。(台本の文章を目で追い続ける)
玄野 光
…………遥琉、着いたよ。さあこっち(手を引いて楽屋へ向かう)
玄野 光
ちゃんと挨拶してね…………あ、おはようございますっ(すれ違う相手に会釈する)
七宮遥琉
…おはようございます。
玄野 光
よし、今日はスタイリストさんが来てくれるから私は見ているよ。先に着替えよう(楽屋に着くと衣装を渡す)
七宮遥琉
うん…。(着替え始める)
玄野 光
遥琉、この後の収録では私は隣にいられないから、君が考えて動いて喋るんだ。難しければ台本通りで良い。できるね?いつも通りやればいいよ(着替えた七宮の腕を掴んで正面から語りかける)
七宮遥琉
…うん。(にこりと微笑み、頷く)
その後も七宮は淡々と指示をこなしていく。しかし、日頃と比較して極端にアドリブが少ないこと、リアクションの乏しさ、表情の不変等を、他のスタッフも不審がるだろう。
スタイリスト
……玄野さん、少しいいですか?
玄野 光
あ、はい…………
スタイリスト
七宮さん、ちょっといつもと様子が違わないですか?…体調がすぐれないとか…何か本人から聞いてませんか?……監督も心配していて…。
玄野 光
……あ、ああ、少し体調が悪いみたいで。すみません、私の管理不足です
スタイリスト
そうなんですね…早くよくなるといいですね。…いえいえそんな、玄野さんの甲斐甲斐しさは私たちもよく知っていますから…アーティストの体調不良はあり得ない話ではないですし、お大事になさってください。
玄野 光
ありがとうございます。ご迷惑をおかけして申し訳ありません(頭を下げる)
~帰宅後~
玄野 光
…………遥琉、今日はもう休んでいい。明日は仕事が多いから……明後日、また話そう(夕食を食べ終えるとシャワーを促す)
七宮遥琉
うん。(浴室に向かう)
玄野 光
ふう…………(溜息を吐いて椅子に座り込む)
玄野 光
(遥琉はどうしてしまったんだ……)
~就寝~
翌日も七宮の状態は変わらない。
~翌々日朝~
玄野 光
遥琉、おはよう。ご飯ができているよ……(疲弊した表情で七宮の手を引く)
七宮遥琉
いただきます。(食卓につき朝食を食べ進める)
玄野 光
…………遥琉、君の現状はあの夢が原因なのか?君も同じ夢を見たのかい?(回答は期待せずに問いかける)
七宮遥琉
うん。でも夢じゃないよ
玄野 光
えっ…………(パッと顔を上げて七宮を見る)
七宮遥琉
………………。
玄野 光
夢じゃないって、どういうことだい?
七宮遥琉
寝てる間に起きたことだけど、夢じゃないんだよ。僕がいらないと思って、みつくんが翼を切って燃やしたからだよ
玄野 光
…………そうだ、君には要らないものだ。それは正しいはずだ。でも君はアイドルとしての在り方から外れていく。何故だ?
七宮遥琉
…………。理由が無くなったからだよ。目標が無くなったからだよ。みつくんに好きになってもらわなくてもよくなったからだよ。(少し間を置き玄野の質問の意味を理解しようとすると、程なくしてから淡々と続ける)
玄野 光
…………目標?君はアイドルがやりたくてこの業界に入ったんじゃないのか?
七宮遥琉
(微笑んだままふるふると首を横に振る)
玄野 光
……だって、それは矛盾しているじゃないか。君が成ろうとしていたものは、アイドルだよ?万人に愛され、万人を愛する者だ。勿論君個人の意思は尊重されるべきだが、でも、それじゃあ順番がおかしいよ遥琉、(混乱するまま言葉を零し続ける)
七宮遥琉
………………。(きょとん、と玄野を見つめる)
玄野 光
おかしいよ。私に……好きに、なってもらうなんて、だって、私は……君が、アイドルをやりたいっていうから…………
七宮遥琉
………………
玄野 光
……遥琉が何を考えているのか、分からないよ……(項垂れる)
~1ヶ月後~
玄野 光
はいこれ、今日のスケジュールと詳細の資料。読んでおいて
七宮遥琉
うん!(資料を受け取り読み始める)
玄野 光
現場に着いたら挨拶……はもう分かっているよね
七宮遥琉
(こくり、と頷く)
玄野 光
…………じゃあ、今日も頑張って。いつも通りに、やるんだよ(背中を押す)
七宮遥琉
おはよーございまーす!
七宮遥琉
今日の衣装はどんなのですか?とびっきり可愛いのがいいなー!
スタイリスト
おはようございます、楽屋に用意してありますよ。今日は英国風にまとめる予定ですので、楽しみにしていてくださいね。
七宮遥琉
やったぁ!
スタイリスト
(玄野に対して)…一時は心配でしたけど、七宮さん、すっかり元通りですね。七宮さんがこの調子でいてくれると、現場の雰囲気が明るくなってすごく助かるんです。
スタイリスト
玄野さんのマネジメントのおかげですね。いつもありがとうございます。
玄野 光
…………いえ、私は何も……(苦笑する)
スタイリスト
謙遜しすぎですよ、玄野さんは。(つられて苦笑する)
…アイドルとこれだけ信頼関係を築けているマネージャーさん、なかなかいらっしゃらないんですから。もっと誇っていいんですよ。
玄野 光
…………ありがとうございます
~2か月後~
玄野 光
はい、今日のスケジュールと詳細の資料だよ
七宮遥琉
はーい!みつくんありがとう!
玄野 光
食べたら出よう
七宮遥琉
うん!
いただきまーす!
七宮遥琉
おいしい!
玄野 光
……そうか。…………うん、ありがとう
七宮遥琉
ごちそうさまでした!
みつくん、今日はどんな現場?
玄野 光
渡した通りだよ、バラエティが二本と音楽番組が一本。あとは雑誌のインタビューが間に挟まってるよ
七宮遥琉
今日もいっぱいだね…。…でも、届けられるように僕頑張るね!
~現場着~
玄野 光
…………じゃあ、今日も頑張って。いつも通りに、ね(背中を押す)
七宮遥琉
………………、…………え………………(玄野に触れられると一瞬固まり、振り返る)
玄野 光
…………どうしたの?
七宮遥琉
…………………………っ…………、………………なんでもない…………。(ぽろぽろと涙が溢れ、苦痛に眉を顰める)
玄野 光
っ!?どうしたの?急に……っいや、少し休もう。大丈夫だよ……すみません!少し待ってもらえますか!(楽屋に戻ろうとする)
七宮遥琉
…………出来るよ、みつくん、大丈夫だよ……ちゃんと出来るよ、(ごしごしと涙を拭う)
七宮遥琉
出来るから…………
玄野 光
…………本当に大丈夫?
七宮遥琉
………………なんで、そんな顔するの…?
玄野 光
え…………?
七宮遥琉
……行ってきます……。
玄野 光
う、うん…………
しかし、その日の七宮は考え事に耽るように黙り込みリアクションが遅れたり、撮影中に突然泣き出してしまったりと、どこか気が散っている様子であった。
~帰宅後~
玄野 光
遥琉、今日はその……あまりいつも通りできなかったみたいだけれど、体調が悪い?大丈夫?
七宮遥琉
………………ごめんなさい……。
玄野 光
いや、怒ってないよ。ただ、今までできていたから気になって…………
七宮遥琉
…………みつくんは……、…………なんで僕と一緒にいるの……。
玄野 光
…………それは、……君を最高のアイドルにしたかったから、それが君の夢だと思っていたから、叶えてあげたかったんだ…………
七宮遥琉
………………僕は、……
……最高のアイドルには…なれないよ…。
七宮遥琉
…………僕は…もう、……明日も、明後日も…きっと輝けない。
玄野 光
…………じゃあ、……じゃあどうするんだ。このまま辞めるのかい(投げやりな様子で聞く)
七宮遥琉
……………………。みつくんもみんなと同じなんだね……。
七宮遥琉
…………全部無駄だった。何も生まなかった。…でも僕が間違えたんでしょ。
七宮遥琉
………………さよなら。(呟くと立ち上がり、ふらふらと家を出る)
玄野 光
遥琉…………?……待って、遥琉…………っ待て!(慌てて追いかける)
七宮遥琉
っ…………追いかける必要なんて無いでしょ!?
七宮遥琉
分かってる癖に……っ…………
玄野 光
分からない……何も分からないよ。2か月間ロボットみたいに振る舞っていたかと思えば、急に出ていこうとする!なんなんだ!そんなに私が気に食わないのかい!?
七宮遥琉
捨てられたって思ってたんだよ…っ!…いらない感情を、間違った感情を……邪魔なものを、やっと無くせたと思ったのに…………。
七宮遥琉
…だ……大体、みつくんだって…!そんなロボットみたいな奴のお世話にそんなに必死になって…馬鹿みたい!
七宮遥琉
さっさと……さっさと捨てればよかったのに…!
七宮遥琉
……そうすれば、そうすれば…………僕だって……思い出さずに済んだのに…………。
玄野 光
できる訳ないだろう!君の世話だって私の仕事だ
七宮遥琉
仕事だからなんでもするの!?じゃあ仕事だから死ねって言われたらするの!?
玄野 光
話が極端だな、そんな訳がないだろう!
七宮遥琉
僕のことが、…僕の気持ちが気に食わないのはみつくんの方でしょ…!
せっかく邪魔なものがなくて、全部みつくんの思い通りに出来たんだから…もっと嬉しそうにすればよかったじゃん!
七宮遥琉
なんなの……みつくんは僕が欲しいの、それとも要らないの…どっちなの……!訳わかんないよ!!
玄野 光
思い通りなものか……!…………っ!(言葉に詰まる)
七宮遥琉
…………このまま辞めるのかって、みつくん聞いたよね…。……教えてほしいのは僕の方だよ…っ……、…………僕は……僕はもう、誰のために…何のために歌えばいいのか分かんないんだもん……っ…………、
七宮遥琉
………………僕はどうすればいいの…………、…教えてよ……みつくん…………
玄野 光
…………遥琉、……そ、れは………………(視線を彷徨わせる)
七宮遥琉
…………………………。(想い人の珍しく狼狽える様子を見て、少しの違和感を覚える。そして、平静を取り戻すため深く呼吸する)
七宮遥琉
……………………1ヶ月…。……1ヶ月は続ける…。…………それで…それで、みつくんに失望されたら……今度こそさよなら…。
玄野 光
失望って……さよならって、どういうこと
七宮遥琉
…僕はもう、みつくんを想って歌うのを辞める。みつくんのために歌うのを辞める。…僕は、誰のためにも歌わない。仕事だからやる。
七宮遥琉
…この2か月で分かったんだ、…そういう僕を…みつくんは望まない。だからきっと失望する。
…みつくんが転職先を探す時間くらいはあげるよ。
七宮遥琉
……それで……さよならしたら、もう…僕たちは会うことはないと思う。……そうじゃないと…諦められないから……。(苦しげに眉を顰める)
玄野 光
勝手だし、一方的だな……
七宮遥琉
……じゃあ、自分がどうしたいかくらい言ったら?
玄野 光
それは…………、……(再び言い淀む)
玄野 光
そんなこと言ったって、良い事なんか一つも無い…………
玄野 光
第一、遥琉だってどうでもいいんだろう。そんなこと…………
七宮遥琉
…え?
玄野 光
だから勝手にアイドルになろうとするし、勝手に辞めようとするし、勝手に私から離れようとする!
七宮遥琉
っ……辞めようとしたのは違うじゃん、離れようとしてるのだって……みつくんが要らないって言ったからじゃん!!っていうか…みつくんだって、僕の気持ちなんかどうでもいいから燃やしたんでしょ!?
玄野 光
どうでも良くない!どうでも良くないから燃やしたんだ!
七宮遥琉
どういうこと!?
玄野 光
だって…………だって、私はとっくに捨てたんだ。なのに、君だけ………………
玄野 光
…………嫌だ(言葉に迷いながら呟く)
七宮遥琉
CCB<=60 アイデア (1D100<=60) > 3 > 決定的成功/スペシャル
七宮遥琉
……………………!
七宮遥琉
……………………捨てないでよ。
七宮遥琉
…………アイドルになるって言ったの、…そういう風に感じてたの…知らなかった…し、……僕も……自分勝手で、強引だった……ごめんね。
玄野 光
遥琉…………
七宮遥琉
……みつくんが、僕のことを見てくれてる瞬間が好きだった…ずっと好きだったんだよ…。…だから、アイドルになるって言ったんだ。…みつくんがマネージャーになってくれたら、ずっと一緒に居られるって…そう思って誘ったんだよ。
玄野 光
っ私は…………私も、そう思った。マネージャーとして、遥琉の傍に居続けようと、でも、それは…………いや違う、捨てたはずなんだ、捨てないといけなかったんだ……(何度も首を横に振る)
七宮遥琉
……もしかしたら、僕がみつくんにちゃんと気持ちを伝えていたら、みつくんは応えてくれたのかもしれない。…でも、それはみつくんが優しいからで、本心じゃないかもしれないって…そう思って、だから……みつくんの方から振り向いてほしかったんだ。
七宮遥琉
…………でも……それはきっと、すごく…意気地がなくて、卑怯なことだったんだね。
玄野 光
…………そんなことないよ
玄野 光
……遥琉の気持ちと私の気持ちは不相応だ。きっと嫌になる。きっと離れていく。きっと扱いきれない。…………無理なんだ、君に応えてもらう事こそ(苦しげに漏らす)
七宮遥琉
…なんで、そう思うの?
玄野 光
今までだってそうだった。私はずっと一番でいたいのに、簡単に他を優先する
玄野 光
それが許せないんだ。………………私は、おかしいんだろうか……?(不安げに尋ねる)
七宮遥琉
…………………………。…あのね、僕ね……
七宮遥琉
……握手会、嫌いだった。ファンレターも、本当はあんまり読みたくなかった。何を書かれても…別にみんなのためにやってたことじゃないし、みんなの気持ちは…本当はどうでもよかった。…中にはね、気持ち悪いことを言ったり書いたりする人もいて、嫌だった。
七宮遥琉
…でもね、……なんとなく、ファンレターの…宛名のところを隠して読んだら、…これ…僕が書いたんじゃないかって思うくらい…一緒だったんだ。僕の気持ちと。
七宮遥琉
……みつくんが彼女作った時、ほんとは凄く嫌だったんだよ?
玄野 光
…………あれは、押されて仕方なく……
七宮遥琉
……好きって、気持ち悪い物なんだよ。汚い物なんだよ。自分勝手で、一方的なものなんだよ。…たまたまそれが交わったら、途端に綺麗なものに思えてくるだけなんだって…僕はそう思う。
玄野 光
…………(少し考えるように目線を下げる)
七宮遥琉
…………だから……捨てないで。
玄野 光
…………遥琉は、本当に私が良いの……?
七宮遥琉
うん。……みつくんが好き。…ずっと好きだよ。
玄野 光
………………私、も……遥琉が、好きだ……。ずっと前から…………
七宮遥琉
…………本当?
玄野 光
う、ん…………本当……
七宮遥琉
………………僕たち、気持ち悪いね……。……でも…………でも、夢みたい……。
玄野 光
……そうだね。…………気持ち悪いけど、……なんだか、スッキリしているような気もする……
七宮遥琉
…………ねえ…、…じゃあ……あのね、手…繋いでもいい?
玄野 光
ここで?…………良いけど、見られるんじゃ……
七宮遥琉
……見られたらやっぱダメかな?
玄野 光
まだ、活動中だから仕事に支障が出るようなことは…………だからほら、家に戻ろう
七宮遥琉
わかった…。
~in 家~
七宮遥琉
(おずおずと玄野の片手を両手で掴む)
玄野 光
…………もういいよ(七宮の手を握り返して微笑む)
七宮遥琉
…………!みつくん、笑ったー
玄野 光
…………そ、そんなに笑っていなかったかな、私……
七宮遥琉
…ずっと、怒らせちゃったままなのかな…って、ちょっと心配だった…。
玄野 光
ごめん…………色々と考えてしまって……
七宮遥琉
ううん!……でも…たまには喧嘩もいいね!
七宮遥琉
……ねえ、みつくんのずっとっていつから?
玄野 光
え………………。…………初めて、遥琉が笑ってくれた時……から…………
七宮遥琉
え!?!?!?!?!?
七宮遥琉
……じゃあ、じゃあ……えっと、僕の歌は…………100点から120点くらいにはなった?
玄野 光
遥琉の歌?…………一万点あげる
七宮遥琉
…………やっぱアイドル、なって良かったかも…?
玄野 光
……そう(目を細める)
七宮遥琉
ごめん嘘!!
七宮遥琉
歌手にすればよかった
玄野 光
私はバラエティに出てる遥琉も好きだよ
七宮遥琉
…………。………………良いことも悪いこともあって、…正解って難しいね…。
玄野 光
そうだね。…………でも、正解じゃなくても遥琉らしいことができていれば、良いんじゃないかな
七宮遥琉
…………アイドル辞めても、僕のこと見ててくれる?
玄野 光
勿論、……ずっと見ているよ
七宮遥琉
えへへ……。…僕もね、みつくんのこと、今までよりもっともっと見てるね!
玄野 光
……ありがとう。……私は、幸運だな
七宮遥琉
……くっつき攻撃ー(玄野の片腕に掴まり身体全体を寄せる)
玄野 光
わっ……どうしたの急に
七宮遥琉
くっつきたくなったのー
玄野 光
……遥琉は、可愛いね
七宮遥琉
………………!!
玄野 光
え……あ、嫌だった……?
七宮遥琉
…ううん、…僕……僕、ずっと…………、
七宮遥琉
……みつくんからの、…その言葉を待ってたんだって…気づいたの……
玄野 光
……言ったことなかったっけ?
七宮遥琉
ないよー。
七宮遥琉
みつくんはね、輝いてるとか、キラキラしてるとか、頑張ってるとか言ってくれてた!
七宮遥琉
それも嬉しかったけどー…でも……、…えへへ…………。(先程の言葉を反芻するとにまにまと口角を上げる)
玄野 光
そ、そうか……なんだか恥ずかしいな……
七宮遥琉
恥ずかしいの?なんで?
玄野 光
気付いて、なかったから…………(手で口元を覆う)
七宮遥琉
みつくん、多分気づいてないことばっかだよー
玄野 光
え!?そうかな…………
玄野 光
で……でも、遥琉だって私の事、気付いてなかっただろう?
七宮遥琉
…………。…気づいてなかった……。
七宮遥琉
……僕たちこれから、びっくりがたくさんになりそうだね!
玄野 光
…………うん、でも遥琉にだったら、楽しみ……だな
七宮遥琉
僕も!
七宮遥琉
あ、そうだ……ねー…、あのね……。
七宮遥琉
…僕、…アイドル、いつまで続けよう?
玄野 光
……辞めたいの?
七宮遥琉
……みつくんは、…続けてほしい?
玄野 光
遥琉が遥琉らしくいられる方が、私にとって大事だよ。遥琉がどうしたいのか、聞かせて?
七宮遥琉
僕らしく……。…僕は、…歌うのは好き。ダンスも嫌いじゃないし、バラエティもドラマも面白かったよ。
七宮遥琉
ライブは、…みつくんのためにしか歌えないけど…。……それでも…目一杯素敵な僕を、みつくんに見てもらえてるって思うと、すごく楽しい。
七宮遥琉
……でも、…もしこのままアイドルを続けて、…もし、ファンの人たちに僕がみつくんのこと好きだって、…みつくんのために歌ってるってバレたら…
七宮遥琉
…たくさんの人が、悲しんだり怒ったりするのかなって思う…。……好きな人に振り向いてもらえないのは、悲しいことだから…。
七宮遥琉
……それに……怒ったり悲しんだりした人たちが、…どんなことを言ったりどんなことをしたりするのか…僕は知ってる。…他の、たくさんのアイドルが通ってきた道みたいに…。
七宮遥琉
…僕はそういうものに、僕のことも…みつくんのことも、巻き込みたくない…。
……ここまで続けてからやっと気づいたんだ。
七宮遥琉
だから僕は……アイドルをやめたい。
…嘘をつくのは…怖いことだから。…とっても。
玄野 光
うん…………、そうか、分かった。すぐには難しいけれど、近いうちにファンに話す機会を設けよう
七宮遥琉
……ありがとう、みつくん…。
玄野 光
私の方こそ、……話してくれてありがとう
七宮遥琉
(ぎゅ、と再び玄野に身を寄せ)ねー、…今日の夜ご飯、僕も作るのお手伝いしてもいい?
玄野 光
構わないけれど……、気を付けるんだよ?
七宮遥琉
花嫁しゅぎょーに危険はつきものだよ!
玄野 光
遥琉の手作りか……あまり考えたことなかったけれど…………そう言われると、食べてみたいな
七宮遥琉
えへへ……任せて!!楽しみにしててね!!
玄野 光
うん、待ち遠しいよ