目の前の土の塊から、すっと、探索者のほうへ伸びてくるものがあった。するするとのびてきたのは、緑に光る茎のようだった。
そうして探索者の胸の位置あたりまでの高さまでに伸びたかと思うと、先端からつぼみを膨らませ、そして静かに、花が開いた。
それは、純白に輝くユリの花。月光に照らされ、一粒の露が花弁を揺らす。それは、心なしか泣いているようにも見えた。
月の光に照らされたそのユリは、あたたかく、探索者をも照らす。次第に身体の異常は元に戻っていった。
【門倉怜司】
……ぁ、…………御手洗……っ!(混濁する意識が戻っていき、記憶の奥底に埋もれていた懐かしい響きを放つ)
【門倉怜司】
(勢いよく立ち上がり、百合にそっと触れてお墓の方に目を向ける)
どこからか風が吹き、ユリがうなずくようにそよいだ。
【門倉怜司】
御手洗……変わらない様子で安心した……。俺は、きちんと約束を果たせただろうか……。嗚呼、御手洗………………綺麗だな。(愛おしそうに白百合へ微笑みかける)
門倉の呼びかけに応じるように、先ほどユリを揺らした露がさらに大きな雫となり、花弁の先につつ、と滑り落ちる。
【門倉怜司】
どんな形であれ、また御手洗と会えてとても嬉しい。…………でも、欲を言うと……、こんなドレスを着た御手洗が、見てみたかったな……。きっと、似合うと思うんだ……。
【門倉怜司】
(眉尻を下げ、真っ直ぐに白百合を見つめる)
【門倉怜司】
御手洗……。…ひなたはいつも、俺を照らしてくれるなぁ……。本当に、こんな俺のために…会いに来てくれて、ありがとう……。…………愛している、ひなた。
【門倉怜司】
(瞳を潤ませ、そっと白百合の花弁に口づけを落とす)
【門倉怜司】
目星:【1d100】を振りました。結果は「13」成功です。(成功値55以下)(各ダイス目:13)
ふと、頭上を見上げた。月はいつの間にかなくなっていた。かわりにただひとつ。赤い赤い、暁の星が瞬いていた。
探索者は思うだろう。「百年はもう来ていたんだな。」
気づけば先ほどから開いていた、庭園の端の門から朝日がのぼっていた。
【門倉怜司】
御手洗……、動け…ないよな、流石に……。
【門倉怜司】
(久しぶりに会いに来てもらったのに、置いていくのは心苦しいな……)
ユリは深く深く根付いている。おそらく、移動させるのは難しいだろう。
しかし、また逢える。探索者は漠然とそう思う。この門の先に何があろうとも、探索者がそうしたように、ユリは必ずここで待っている。そう確信できるのは、ユリもまた、100年の時を経て、探索者に逢いに来たからだ。
門に目を向けた探索者を見送るように、花弁の雫がぽとり、と地面に落ちた。
【門倉怜司】
御手洗、今度は……俺が待たせる番だな。(目を細めて白百合に呼びかけた後、しっかりとした足取りで門へと歩き出す)
門から出るやいなや、探索者は激しい眠気に襲われ、その地面に倒れこもうとする。
しかしいつまでたっても地面はやってこず、足元の影に吸われていくばかりである。
なすすべもないまま、探索者は意識を手放す。
直前、どこからかこんな声が聞こえた気がした。
「恋人の死体を埋めた気分はどうだい?」と。
気が付くとそこは見慣れた自室のベッドの上だった。あおむけに寝ていたのだろうか、天井の電灯がやけに明るく感じた。
ふとベッドの傍らに人影を発見する。それは御手洗ひなただった。
【門倉怜司】
……ふふっ、やっぱり御手洗は我慢強いな。あんなことを言っておいて、俺の方が待ちきれなかったらしい。(御手洗を慈しむようにそっと髪を撫でる)
【御手洗ひなた】
…ん……。……あ、れ……門倉くん…………?
【御手洗ひなた】
…え、と……あれ、なんで……?
【御手洗ひなた】
(門倉の部屋にいることが不思議なようだ)
【門倉怜司】
……っ、おはよう…御手洗。なぜ俺の部屋にいるのかは不明だが……、うん、顔が見られて嬉しい。(御手洗の上から覆いかぶさるように抱きしめる)
【御手洗ひなた】
あ…、私………!(自身が生きていて、元の姿に戻っていることを認識し)
【御手洗ひなた】
っ……!!(途端にぎゅっと強く門倉を抱きしめ返す)
【御手洗ひなた】
門倉くんっ…!…愛を、返せるって……こんなに幸せなことなんだね…。
【御手洗ひなた】
あったかい、門倉くん……(しみじみと言う)
【門倉怜司】
御手洗……、ああ…そうだな……。暖かくて、心地いい。
(手放すのが惜しいと言わんばかりに腕に力を籠める)
【門倉怜司】
なあ、御手洗……。俺があのとき言ったことも……覚えているのか?
(一旦身体を離して、正面から御手洗を見つめる)
【御手洗ひなた】
…っ、ふふ……、もちろんだよ。…門倉くんが約束してくれたことも、ずっと、ずっと待っていてくれたことも、形が変わっても…愛してるって言ってくれたことも……絶対、忘れたりしないよ。
【門倉怜司】
そうか……。あの、御手洗……、本当はもっと、ちゃんと準備したかったんだっでも……どうしても今、言いたくなった。(御手洗の手を取って、ベッドに座らせて向かい合う)
【門倉怜司】
……御手洗ひなた、俺と…結婚してほしい。
【御手洗ひなた】
……!(目を見開き、口を開け心から驚いた様子でしばらく放心している。が、そのままぽろぽろと涙を流し始める)
【門倉怜司】
…ぁっ、ええと…すまん御手洗……っ、俺も……もっと雰囲気とかっ、指輪とかっ、そういう準備が必要だったとは思っているんだ……!あ、ま…また日を改めようかっ……?
【門倉怜司】
(行き場のない手を宙に浮かせたまま、おろおろと言葉を紡ぐ)
【御手洗ひなた】
…………、……門倉、怜司くん……っ…、
…こちらこそ……よろしくお願いします……っ…!!(泣きながらくしゃりと破顔し、震える声でなんとか絞り出す)
瞬間、ふわりと、ユリの花の匂いがした。
【門倉怜司】
…え。…ぁ、お、れで……い、いのか……?(目を白黒させてしどろもどろに問いかける)
【御手洗ひなた】
……ぁ…、れ……怜司くんっ、怜司くんが、いいの……っ…!(離された門倉の手を、両手で包み込み強く握る)
【門倉怜司】
……!そ、うか……そうか…………。ふ、ははっ…、ひなた……大好きだ……二人で、幸せになろう。(こぼれるような笑みを浮かべ、頬を濡らす)
【御手洗ひなた】
…うん、うんっ……約束、だよ…?私っ…、怜司くんと出会えて、本当によかった………!
【門倉怜司】
ああ……約束、だな。俺も……俺を照らしてくれる、ひなたという女性に出会えて、心の底から幸福だ……。
【御手洗ひなた】
っ…!……大好き、怜司くん…っ……(門倉に思いっきり抱きつき、肩口に顔をうずめる)
【門倉怜司】
わっ……。よしよし……、ひなた…好き、好きだ…………っ。(驚きつつも御手洗の頭を撫でて抱きしめる)
あの不思議で長大な夢は、輪廻を越えてでも共に居たいという、二人の潜在的欲求が生み出したものか。或いはただの悪戯な神の気まぐれだったのかもしれない。
しかし、どちらにせよ甘美な想いは通じ合ったのだ。
あたたかなまどろみの中、運命を繋ぎとめるように抱きしめ合う二人を、ユリの香りが祝福していた。
4d3のSAN値回復
【門倉怜司】
【4d3】を振りました。結果は「6」です。(各ダイス目:3,1,1,1)
追加で1d10のSAN値回復。
【門倉怜司】
【1d10】を振りました。結果は「8」です。(各ダイス目:8)
【門倉怜司】
【1d10】を振りました。結果は「10」です。(各ダイス目:10)
5回復
トゥルーエンド
【シナリオ背景】
某作家の某作品を、どこから聞きつけたのかなんか知ってしまった某吾輩はニャなんとかである様が、「人間にこれやらせたらエモそうじゃね?」ってノリと勢いでやっちゃった系のアレ。
そんなわけで(?)最後にユリの花にキスでもするもんなら、大興奮でベッドの上で朝チュンを迎えさせてくれます。
夏目漱石の「夢十夜」が好きすぎて、それを元にしたシナリオです。
恋人もしくは相方の死体を埋めたい方、そして恋人もしくは相方との絆を確かめたい方にどうぞ。