あなたは、狩屋聖人が好きだ。しかし、その想いを相手に伝えてはいない。
それは諦める事も叶わなかった長年の恋心かもしれない。最近芽生えた初々しい恋心なのかもしれない。
とにかく、あなたは狩屋聖人に一方通行の想いを抱いている。
今日も胸に秘めたその想いと共に、いつも通りの日常を過ごしていることだろう。
一週間も終わりを迎え、明日は休日だ。
そんな中、狩屋聖人から連絡が来る。
藤谷「もしもし…?」
電話に出ると、狩屋聖人は妙に上機嫌で話し出す。
狩屋「あ、もしもし、藤谷くん!」
藤「あ、うん…。な、何…?
狩「明日って空いてる?」
藤「空いてるけど…」
狩「本当!?なんかね、友達から美術館のチケットもらったんだけど、 よかったら一緒に行かない?藤谷くんと行きたいなって思って。藤谷くん、ほら、美術部だし、興味ないかなって思って。」
藤「うん、すごく興味ある…。ありがとう、誘ってくれて…。」
藤 心理学→???
塵 なんか機嫌良いな、楽しそう、と思う。
藤「(いつも楽しそうだけど、今日はいつにも増して機嫌いいな…。いいことあったのかな?)」
狩「本当?嬉しい!じゃあ楽しみにしてるね。」
あなたが了承すると、狩屋はとても機嫌が良い様子で電話を切った。
あなたはいつもと様子の違う狩屋に首を傾げながらも、明日に備えて眠りにつくことだろう。
待ち合わせ場所につくと、狩屋が先にあなたを待っている。
狩屋はあなたに気が付くと、嬉しそうに駆け寄ってくる。
狩「おはよう、藤谷くん!」
藤「おはよう。ごめん、待たせちゃった…?」
狩「ううん、なんかね、ちょっと楽しみで、ちょっと早く来すぎちゃった。」
藤「…なんか…昨日もそうだったけど、なんか機嫌いいけど、いいことあったの?」
狩「うん!今日が楽しみで、すごく。今日ね、藤谷くんに早く会いたくて早く来ちゃった。」
藤「そうなんだ…。なんか嬉しいな。」
塵 目星が振れる。
藤 目星→成功
塵 狩屋くんがいつもよりお洒落をしているような気がする。
竹 いつにも増してAPPに磨きがかかるじゃん。キラキラしてる。
美術館へはここから歩いてすぐのようで、狩屋が案内してくれる。
道中で目星が振れる。
藤 目星→成功
美術館に向かう最中に大きな噴水が目に入る。
知識が振れる。
藤 知識→成功
あなたはその噴水が、巷で噂になっている告白スポットであることを知っている。ロマンチックなハート型の噴水がそういった噂を招いているようで、告白の成功率が高いという噂もある。また、今から向かう美術館と合わせてデートの黄金ルートと呼ばれている事も分かる。
竹 まあちょっと意識はするかな。
藤「(そわそわ…)」
あなた達が美術館につくと、受付でパンフレットがもらえる。
スタッフ「こちら当館のパンフレットになります~。あ、お客様、ラッキーですよ。」
スタッフ「今やってるスタンプラリー企画、今日が最終日なんです~。記念品もお渡ししてるのでぜひ参加してみてくださいね。」
と、企画展のポスターも渡してくれる。
塵 パンフレットの画像を見せます。↓内容
第1展示室
温室設備を備えており、色鮮やかな花木をお楽しみいただけます。
シアタールーム(第2展示室)
シアタールームは、小規模なプラネタリウムとなっており、季節ごとに変わるプログラムを準備しております。
第3展示室
幻想的な空間で色とりどりの魚達をご覧になれます。
第4展示室
多種多様なジャンルの絵画を展示しています。
休憩所・ショップ
休憩所には飲食スペースも設けております。
狩「いっぱいあるね!」
藤「美術館なのにお魚とかもいるんだね…。楽しみ。水族館みたいだ…。」
☆ポスター
「特別スタンプラリー企画」
各4つの展示室ごとに、’愛’に関する展示物がピックアップされているらしい。
各展示物の傍に置いてあるスタンプを集めれば、受付でささやかな記念品が貰えるという小企画。どうやら今日が展示期間の最終日らしい。スタンプラリー用の紙も添付されている。
藤「せっかくだし…、スタンプラリーしながら行く…?」
狩「そうしよう!じゃあ、第1展示室からね。」
塵 第一展示室。目星が振れる。
藤 目星→成功
スタンプラリーを見つける。
その傍には、ベコニアが植えられており、説明書きがされている。
☆ベコニア
ベコニアの花言葉には、「親切」「日々の幸せ」「愛の告白」といったものがあります。
また、「片想い」という花言葉もあります。ベゴニアの葉が左右非対称であり、半分に折っても重ならない葉が二人の心が同じでないと解釈されて生まれました。
藤「(💦)」
狩「藤谷くんさ、好きな人いるって前言ってたよね。」
藤「うん…、言った。」
狩「おれもね、今ね、好きな人いるんだけど、両思いだったらいいなって思ってるんだ。」
藤「……、そうだね…。でも狩屋くん人気者だから…多分両思いなんじゃないかな…。」
狩「そうかな?」
竹 早くない?第1展示室でこの気まずさ?
塵 帰るもんね
竹 1回でね、ごめんね本当に…って言って。じゃあ次シアタールーム行くかな。
シアタールームは、プラネタリウムのようになっている。
丁度上映が始まるようで、係の人が席まで案内してくれる。
夏の星座を中心とした上映が始まる。
ナレーションを聴きながら頭上に映し出された星明りを眺めていたが、あなたはふと、自分の肩に温もりを感じる。横を見れば、狩屋があなたに凭れ掛かって居眠りしている。疲れていたのだろうか、寝てしまったらしい。
塵 POW×5を振ってください。
藤 POW×5→成功
ふと気が付けば、ナレーターが夏の大三角形に次いで、「や座」の説明をしていた。所謂矢のように見える星座のことで、小さいながらも夏の大三角形の中に位置しているらしい。
や座の由来にはいくつか説があるものの、ひとつに愛の神、キューピッドが放ったという説がある。この矢を受けた者は、恋に落ちてしまうという。
スタッフ「ありがとうございました~」
上映が終わると、係員の人がスタンプラリーのスタンプを押してくれる。狩屋もそこで目を覚ますだろう。
藤「…結構序盤に寝ちゃってたけど…大丈夫?」
狩「ごめん、寝ちゃってたみたい。疲れてるのかな?せっかく藤谷くんと遊びに来たのに寝ちゃった。」
藤「まあ…、でも、また遊べるから。…今日は早めに帰って休んだ方がいいかもしれないね…。」
第3展示室
薄暗い部屋の中にたくさんの水槽が展示されている。ライトで照らされた水槽だけがぼんやりと光って、幻想的な雰囲気を感じることだろう。
藤「…すごい、この間行った水族館みたいだね…。」
狩「綺麗!」
奥に進んでいくと、ふと横に居た狩屋があなたに手を絡めた。
困惑して狩屋の方を見ると、狩屋は悪戯に微笑んでいる。
狩「ここなら暗いから、誰にも見えないね」
竹 SANチェックしますね。
藤 SANc→成功
藤「え、え?(あからさまに動揺する)」
狩「こうやってぎゅってしてるの嫌?(しょぼん)」
藤「…嫌じゃない…。」
狩「(にっこり)(そのまま手を繋いで歩く)」
塵 目星が振れる。
藤 目星→成功
あなた達がそうして色とりどりの魚を眺めていると、スタンプラリーが置いてあるのを見つける。傍の水槽には、他の派手な魚に比べるとやや地味なメダカがたくさん泳いでおり、ポップな説明書きがしてある。
☆メダカの話
メダカの恋に関する研究、ご存知ですか?
メダカのメスは、見たことのないオスよりも、見たことのあるオスの方を積極的に受け入れるっていう結果があるんです!メダカの恋は「一目ぼれ」よりも「デートの回数が多い」方が成就しやすいのかもしれません♡
さらにメダカは見たことのあるオスと会った時、脳であるニューロンの活動が活発になるみたいです。いわば恋心のスイッチってやつですかね!?
人間の恋心と脳の伝達物質の関係も明らかになれば、
「惚れ薬」の開発も夢ではないかもしれませんね!!
狩「藤谷くんはさ、本当に惚れ薬ができたら使う?使いたいと思う?」
藤「…なんで?」
狩「気になっただけだよ。惚れ薬って書いてあったから。」
藤「…好きな人いるって言ったもんね。でも使わないかな…。
狩「そうなの?」
藤「…だ、だって…それはなんていうか、ほんとの恋心じゃない気がする…。」
狩「なるほどね、」
藤「…うん。それで好きにさせても、相手のこと…幸せにできないんじゃないかな。」
狩「藤谷くん、優しいね。」
藤「…そう?…臆病なだけな気もするんだけど…。」
狩「そんなことないよ!」
第4展示室
第4展示室には、様々な絵画が飾られている。
狩「すごい!」
藤「急に美術館らしく…。」
狩「いっぱいあるね!」
藤「そうだね…」
二人でしばらく眺めていたが、ふと狩屋がスマホを取り出して、顔を顰めて居る。
狩「ごめん、 ちょっと母さんから電話かかってきちゃって。向こうの休憩所の方で1回電話するから、待っててもらっていい?すぐ戻ってくるから。」
藤「…ぼ…僕も行っちゃ駄目?」
狩「うーん、ちょっと待っててほしい。藤谷くん、絵見てて。」
藤「わかった…。」
あなたが了承すると、狩屋はそそくさと休憩所の方へ急ぐことだろう。
あなたは静かな館内に1人、取り残される。
そんな時、ふと、あなたの目に1つの絵画が目に入る。
弓と矢を持った翼のある少年、いわゆるキューピッドが’目隠し’をつけた姿で描かれている絵画だ。
タイトルを見ると、そこには『盲目のクピド』と示されている。
塵 知識かラテン語が振れる。
藤 知識→失敗
竹 逆に芸術技能で振れない?
塵 振ってもいいよ。
竹 芸術(彫刻)65で振ってもいい?
塵 いいよ
藤 芸術(彫刻)→成功
クピドとは、キューピッドのラテン語名だと分かる。
竹 まあそういう彫刻もありそうだもんね
塵 ありそう
プレートの作品説明欄にはこう書いてある。
☆盲目のクピド
クピドもしくはキューピッドとは、愛の神を示し、愛の象徴として使用されます。
そんなクピドが目隠しをしている姿は、中世ヨーロッパ時代「盲目であること」が否定的なイメージを持っていたことから、自分勝手で官能的な愛である「性愛」の象徴と言われました。反対に目隠しをしていないクピドは理性的な聖なる愛である「聖愛」の象徴であると言われています。当時は性愛よりも聖愛の方がより高次なものとしてみなされていました。
それが転じて、目隠しを外す姿のクピドは理性を取り戻し、より高次な愛を身に着け、未来へ羽ばたく者として象徴づけられています。
あなたが、それを眺めていると突然背後から声がかかる。
「面白いですよね、愛に種類があるなんて」
「愛なんて、全部一緒だと思うのですけど」
はっと振り向くと、そこには黒スーツの容姿端麗な男が立っていた。
長い前髪から覗く赤い目があなたをにやにやと見つめている。
「……今日、お連れの方の様子、おかしいと思いません?」
「……彼は今、あなたの事が好きなんですよ。気づいてました?」
「愛してるんですよ、あなたのこと」
「僕……いえ、正確には僕ではないのですけど。僕の知り合いがちょっと不思議な力で彼を心変わりさせたんです」
「どうです?今の気分は?」
藤「…なんでそんなことしたんですか…。」
男「あなたが望んでいると。まあ、やったのは僕じゃないんで、正直なところわかんないですけど。」
藤「戻してほしいんですけど。」
男「おや、…お優しいんですね。このままなら晴れて気持ちを通じ合わせたままでいられるのに?」
藤「でもそれは多分、狩屋くんの幸せにはならないので。(男を睨みつける)」
男「あなたが彼を好きになったのなんて、クピドが適当に矢を放っただけでしょう。ただの偶然だ。それこそ目隠しをして適当に矢を放ったのかもしれませんね。
男「そんな相手に一方的に執着して、あなたは報われるのですか?報われない恋心に意味などないでしょう?」
藤「ありますよ。…僕、おこなんですけど。」
男「おこって何?知りたいな」
藤「僕はその…、 好きになってから…人生が変わったっていうか、毎日楽しいから。別に報われるとか 報われないとか…そういうの関係ない。…元に戻してくれませんか。」
男「うーん…なるほど。……やはり人間とは気難しいですね……では、その時が来たらあなたが戻してください。文字通り、目隠しを外せば戻ります。もちろん、気が変わったというならお好きにしていただいて構いませんよ。それはそれで興味深いですから。
男がそう言ったかと思うと、その姿はいつの間にか消えている。
しばらくしてすぐに狩屋が戻ってくるだろう。盲目のクピドの傍に最後のスタンプラリーもある。
狩「ごめん藤谷くん、遅くなっちゃった!」
藤「……なんか…………、…いや、なんでもない。」
狩「? うん!」
狩「……大体見終わったし、そろそろ出よっか。」