【CoCセッション】ボトルシップは波を切る


その2

ザブンと透明な水が大きく、部屋を洗い流していくのが見える。

鮮やかな色はすべて落ち、どこかへと流されていく。

コトン、と床にペットボトルが落ちた音で探索者は意識がはっきりとする。

探索者と藤谷がいるのは、記憶通りの数日過ごした船の中だ。

 

竹 身体は衰弱しているが、意識ははっきりしています。藤谷くんがふらりと探索者に寄りかかってくる。

 

狩「藤谷くん、疲れちゃったの?」

藤「あ…ご、ごめん…。僕もちょっと何も食べてないから…。」

 

竹 もう1回部屋を探索することができます。探索箇所も送ります。

 

【探索箇所】

・ソファー

・テーブル

・棚

・キッチン

・パウダールーム

・オーナーズルーム

・船尾

・操縦席

 

 

狩「じゃあ藤谷くん、ちょっと休んでて。おれちょっと元気出たから。」

藤「本当…?。うん、わかった…。あ、で、でも…困ったら呼んで。」

狩「うん。藤谷くん、ソファー座ってて。ありがとう!」

藤「(ぎゅっ)」

狩「(藤谷くんの体冷たい!)」

 

狩「(ソファーを見る)」

 

 

ソファーは何の変哲もないものに見える。手帳を読み直すことができる。

手帳はほぼ新品で、震える字で記録のようなものが書かれているのが分かる。おそらくこれは山田が書いたものだろうと気付く。

 

 

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3日目

もう3日になる。いつ助けは来るのだろうか。

いやそもそも助けは来てくれるのか?

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4日目

まだ大丈夫なはずなんだ。2人も余裕がありそうだ。

ただ、寝ているときに変な声が外から聞こえるような…気のせいか?

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5日目

音で目がさめた。やっぱり気のせいじゃない。

ぐらぐらする、けっこうキツイ。

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6日目

おなかがすかない。でも大じょうぶ、もうすぐ助けが来てくれる。

つぎに声がきこえたら、外にでて、高いばしょで大声とけむりをあげて、手をふれば。

そうだ、あかりがいる。オーナーズルームにたしかおいておいた。

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7日目

きた

たすけだ

これでにっきもおわり

 

 

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狩「(テーブルを見る)」

 

 

うっすらと汚れてはいたが、平らで何の変哲もないテーブルだ。テーブルの上のメモには以下の内容が書かれている。

・テーブルのメモ

「いるもの、ライト、発煙筒」

 

 

狩「(棚を見る)」

 

横に長く広がる棚だ。様々なものが置かれているが、棚の近くに赤い筒が落ちているのが分かる。

 

狩「(赤い筒を拾う)」

 

拾ってみれば、それが発煙筒だと分かる。

 

狩「(発煙筒をテーブルに置き、キッチンを見る)」

 

 

コンロが2つ付いた簡易キッチンだ。水道の蛇口もあるが、そこから水が出ることはない。

目星が振れます。

 

 

狩 目星→成功

 

キッチンの引き出しの奥底に、小さな缶に入ったドライフルーツを見つける。賞味期限は切れているが、食べられないことはなさそうだ。

 

塵 賞味期限は実質無いのと一緒だから大丈夫。消費期限も一週間くらいなら大丈夫。嘘だけど

竹 消費期限は守った方が良い

塵 まあ1日くらい過ぎても食うけど。

 

塵 ドライフルーツは何のフルーツ?

竹 好きなのでいいよ

塵 じゃあオレンジ

 

狩「(藤谷に向かって)藤谷くん、ドライフルーツあったよ。ちょっと賞味期限切れてるんだけど、カビとかは生えてないよ!一緒に食べよう。オレンジ嫌いじゃない?」

藤「うん…、好きだよ。ありがとう…。」

狩「あーん」

藤「(もぐ…)美味しい…」

藤「あーん…」

狩「モグムシャ!」

狩「(指もはみはみする)」

藤「(狩屋くん…!?)」

藤「…お腹すいたよね…。」

 

竹 耐久を1回復してください。

 

狩「(食べ終わって)じゃあ、もうちょっと調べてくるから待ってて!」

藤「うん、ありがとう…。」

狩「(なでなで)」

藤「(にっこり)」

狩「いつもは藤谷くんの方が背高いけど、今は俺の方が高いー。」

藤「でも、立ったら僕の方が高いもん…。」

狩「む!(怒っちゃった)」

藤「ご、ごめん、ごめんね、」

狩「(ほっぺをむにっと引っ張り)…へへへ。じゃあ、行ってくるね!」

藤「ありがとう…。あ、でも困ったら呼んでね…。」

狩「うん!めっちゃでっかい声で呼ぶね!」

藤「うん…、それなら多分聞こえると思う…。」

狩「(パウダールームに向かう)」

 

 

【パウダールーム】

中に入ると、洗面台とトイレがあった。鏡も備え付けられており、覗けば自身の真っ青な顔が映る。

トイレに水はなく、ついているハンドルを回せば水が流れるようだが、真水ではなさそうだ。

 

 

狩「顔色悪いなーおれ。母さんに怒られちゃう。もっとお肉食べなさいって。」

 

狩「(オーナーズルームに向かう)」

 

竹 オーナーズルームの扉は鍵がかかっている。

 

狩「(じゃあちょっと後にしよ)(船尾に出る)」

 

船尾に出ると、どこまでも広がる大海原が見える。水面にはエンジンオイルが漏れ出し七色の油膜が張り、波が揺れる度に、歪んだ叫び声のような空耳が聞こえた。

探索者がふと、船のヘリに目を向けると、ふちに手のようなものが覗いて見えた。その指先は明らかに人間のものではなかった。肉を引き裂けそうなほどの鋭い爪は船の一部をガリガリと削る。

そのままそれが身体を持ち上げ、船の上へと這い出てきた。

その生き物は一見して人の形状ではあるが、てらてらと光る鱗に全身が覆われ、裂けた口からは深海魚のような牙が見える。

ギョロギョロと飛び出した目が、探索者を捉えると、そのまま襲い掛かかってきた。SANC(0/1d6)

 

狩「うわー!!藤谷くん!!」

 

狩 SANc→失敗 1d6→1

 

竹 戦闘だね。藤谷くんは間に合うけど、藤谷くんのターンは1ターン消費で。次狩屋くん。

 

藤 SANc→成功

 

 

狩 こぶし(+マーシャルアーツ)→両方成功

 

??? 回避→失敗

 

狩 ダメージ2d3→5

 

竹 そうすると、化け物は悲鳴を上げ、海に逃げていく。

 

 

狩「あ…ごめん、なんか呼ばなくてもよかったかも、 ちょっと大げさな声出しちゃった。」

藤「いや…、でもびっくりするよね…。」

狩「ちょっとびっくりしちゃったから、藤谷くんいてくれてよかったー。」

藤「…狩屋くん、ほんとに強いね…。あ、け、怪我とかない…?」

狩「うん!大丈夫!」

藤「よかった…。」

狩「(ぎゅっ)」

藤「(怪我が無いかさすって確かめる)」

狩「藤谷くん、つめたーい」

藤「…でも、さっきまでは狩屋くんの方が冷たかったんだよ…。」

狩「そうなの?でもひんやりしてたよさっきも、藤谷くん。」

藤「…まあ…水、飲ませてたからね…。」

狩「?」

 

狩「じゃあもう1回休んでて。ごめんね。」

藤「あ、でももう結構平気だよ…。狩屋くんがさっきドライフルーツ持ってきてくれたから…。」

狩「よかった。ドライフルーツって栄養いっぱいあるもんね。母さんが言ってた。ビタミンとかいっぱい入ってるんだよ。」

藤「そうなんだ。うち、あんまり缶詰って食べないから知らなかったな。」

狩「そうなの?でも良いよ。なんかね、開けるの面白いし。」

藤「どうやって開けるの?」

狩「こうやってね、(缶切りの開け方をジェスチャーで伝えようとする)」

 

藤 アイデア→成功

 

藤「なるほど…。そうやって、こう、縁のところ切る感じなんだね…。」

狩「うん、そうだよ!」

 

狩「(操縦席に向かう)」

藤「(ふらつきながらも狩屋についていく)」

狩「(藤谷の手を握る)」

 

【操縦席】

階段を上り、操縦席に向かうとそこは眺めが良過ぎて嫌になるくらいの場所だった。

周囲は波打つ大海原が広がるだけで、他には何も見えない。

操縦席の椅子の下で、キラリと何かが光ったような気がした。

 

狩「(光ったものを見る)」

 

それは山のキーホルダーが付いた鍵だった。

 

狩「キーホルダーついてる、」

藤「これ、山田くんのやつかな…。」

狩「山だから!?」

藤「改めて説明されるとちょっと恥ずかしいけど…。」

狩「そんなことある??さすがに??…でもそうかも…」

藤「でも、どこの鍵なんだろう…。」

狩「わかんない…。でもオーナーズルームさ、鍵かかってたから、ちょっと1回確かめてみよう。鍵かかってるところそこしかなかったし。」

藤「うん…。」

 

藤&狩「(手を握ってオーナーズルームに向かう)」

 

【オーナーズルーム】

扉を開けて中を見ると、そこは人が2~3人寝ころべそうな程度の狭い部屋だった。入り口から短い階段があり、床が最初の部屋よりも高くなっていることが分かる。天井の高さは変わらず、立ち上がれば頭をぶつけてしまうかも知れない。そこはどうやら寝室のようで、高くなった床の上に隙間なく布団敷かれている。

 

狩「(ゴロゴロ)(布団を転がる)」

 

竹 目星が振れる。

 

狩 目星→成功

 

 

布団をめくると、床下収納のような蓋が見つかる。

 

塵 じゃあ、蓋の取っ手とかにぶつかって「痛い!なんか落ちてるよ?」と言って布団をめくります。

竹 なるほど

 

中を探れば、ライトやロープなどが乱雑に詰められている。食料や飲料はない。救難信号用のライトの照らし方などの冊子もあった。

 

藤「これ、 ライト…?」

狩「かなあ?」

 

遠くで、波の音とは違う音が聞こえた気がした。それが船の汽笛の音だとすぐさま分かるだろう。

もしかすると、この周囲に船がいるのではないだろうか。

しかし、音は酷く遠くから聞こえていた。こんな小さな船を見つけてもらえることはこのままでは不可能だろうと確信する。

 

狩「なんか船の音聞こえるよ!」

藤「あ…じゃあ助けを求めなきゃ…。」

狩「なんかこのライトと発煙筒使ってさ、むむってやろうよ。」

藤「うん…ちょっとわかんないけど…。でも、狩屋くんがどうすればいいのかわかるなら、僕協力するよ…。」

狩「よくわかんない。」

 

竹 床下収納の冊子に全部書いてあるよ

 

藤&狩「(冊子を読む)」

 

 

狩「(操縦席に上って、ライトと発煙筒を使う)」

 

 

階段を駆け上がり、操縦席へと向かうと、豆粒のようだった影がはっきりと船であると分かる。チカチカと照らすライトは、遠くに見える船に無事に届いた。向こうからもチカチカと返事が返ってくる。

大きな船は、ゆっくりと、ただ確実にこちらへ向かってくることが分かる。

それと同時に、水面に見えていた影は散らばる様に遠くへ消えて行った。

そして、向かってくる船を見つめながら、探索者達は自分たちが助かったことを確信するだろう。

ボー、と鳴る汽笛の音が大きく響く。

身体が痺れるようなそれを感じると、疲労が限界に達したのか、探索者達はそのまま意識を失った。

 

後日、探索者達は病院で目覚め、あの時の出来事が遭難事件として扱われ、少し話題になったが、それもすぐに波が引くように消えていった。

 

<探索者生還>

 

 

 

 

 

【シナリオ背景】

探索者とKPCは共通の知人である山田浩二(やまだこうじ)に誘われ、クルーザーで海へと遊びに行く。しかし、その途中で深きもの達の儀式によって起こされた突然の異常気象に巻き込まれ、遭難。

数日間、3人で備蓄された食料と水で救助を待っていた。極限状態に近いこの状況で、それぞれ精神に異常が出始める。

山田は深きもの達の声に誘われ海へ落ち、探索者は幻覚と記憶障害を発症し周囲を正しく認識できなくなり記憶が抜け落ち、KPCは探索者に対する執着を発症する。

2人きりになった船の中で、KPCは衰弱し続ける探索者に口移しで水や氷、食料を与え続けていた。

それにより、意識が混濁しながらも探索者が周囲を認識できるようになったところから本編は開始する。

KPCが味方なのか、ここはどこなのか、自分が置かれている状況は何なのか、助かるにはどうしたらいいのか、それを探っていくことになる。