「ねえ門倉くん、これ見て、可愛い!」

 彼女がもたらした物の大きさは計り知れない。どんなに闇の中に居ても、いつだって君は柔らかな陽光で、俺の心の支柱となった。

「わあ、似合ってるよ門倉くん、かっこいい……」

 彼女が今も隣で笑っていてくれるから、俺はまだ生きている。あの時、彼女と共に生きることを決めた。俺はとても幸福な人間なのだろう。彼女のような人と添い遂げられるのだから。……だからこそ、

「好きだよ……怜司くん」

 彼女の居ない世界なんて、今の俺には到底思考が及ばない。もし明日にでも彼女の瞳が、二度と開かなくなったら。彼女の笑顔に、声に、体温に、触れられなくなってしまったら――。そう思うと、身体の不調は無いのに途端に寒気がする。

「怜司くん、今日はさみしがり屋さんな日なの?可愛い……」

 いつだって、君に焦がれている。このまま溶け合って、一つになれたら……いつか君が消える日を迎えても、少しはこの空の胸が満たされるのだろうか。ちらついた思考を気取られぬように、彼女の言葉に小さく頷いてその光に触れた。君は知らなくていい。ああでも矢張り、知るべきなのかもしれない。君が手を差し伸べた男が、どんな病態に曝されているのか。……それでも君は、俺の全てを包んで笑うのだろう。知っている。君の懐に一度触れてしまえば、そんなことは分かり切っている。君は今日も相変わらず、温かくて、柔らかいな。……ひなた、愛している。

 

門ひなへのお題は『いい加減思い知れば良いのに』です。

https://shindanmaker.com/392860