冬の練習

 冬は手が悴んでしまい、楽器を弾く前にまず体温を戻すところから始めなければいけない。カイロを握ったり、腹で温めたりする。上達のために毎日の練習は欠かせない。午前中は外出していたしそろそろ触っておこう、とベースを取り出す。それにしても今日は寒い。足も冷えているが指先が冷たい。

 

 外出後のハンドケアを終え、リビングに戻ると、一心不乱に息を吐いて手を擦る相ケ瀬の姿があった。暖房を付けたばかりの部屋には外と殆ど変わらない冷気が漂っていた。膝に置いた楽器を見るに、練習するのに不都合があるのだろう。ソファの後ろに回り込むと相ケ瀬が振り返る間もなくその手を取る。手に仕込んだ少量のハンドクリームを馴染ませると、自分より一回り大きな手を甲側から握りこんで血行を良くするように指の根元をぐっぐっとマッサージする。やがて自身と同程度の体温を取り戻した肌を慈しむように撫でるとそっと手を離した。

「練習、頑張れよ」

 

今日の久々宇賢作

部屋の中で手がつめたくて擦り合わせていたら、後ろから両手をとられる。指を絡めてしばらく握っていたら温かくなった。

 

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