零れ落ちる息を拾い上げるように口づける。未だにキスの合間に上手く息を吸えない相手の口端から唾液が顎を伝う。

「ん……ふァ…………」

「…………ふ……っ」

 舌を吸い上げるとびく、と身体が跳ねた。安心させるようにその細い肩を撫でると、徐々に脱力していく様子に目を細める。何かを探し求めるように彷徨っていた彼の右手が、ぼくの服を掴んで控えめに握られた。口づけの角度を変えながらそっと彼の表情を盗み見れば、固く閉じられた瞼が微かに震えている様子が窺えた。…………なるほど、次はそれがお望みなのだね。このまま彼の願いを叶えてあげても勿論良いのだが、今日は少し趣向を変えてみようか。

「どうしてほしいのだね?」

「……エ…………?」

「きみの考えている事を、そのまま教えてくれたまえ」

「ええッとォ…………」

 彼の言葉を待っている間も、手は止めることなく骨ばった胸部をなぞる。くぐもった声を漏らして身を捩りながらも、ぼくの手から逃れようとはしないいじらしさに熱を帯びた溜息が漏れる。薄く水面が張られた琥珀色の瞳に見つめられると、加虐心にも似た何かが刺激されるようだった。頭が沸き立つようだ。心臓が掻き乱される。もっときみを暴きたい。全部見たい。見せて。

 

 

まほノワへのお題は『ほら、早く言わなくていいの?』です。

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