告白の時の話

 自分に向けられる視線の意味なんてずっと分かっていた。オレは正体不明の何かに怯えていたわけじゃなくて、嫌われる理由も、避けられる理由も、攻撃される理由も、全部分かっていた。「普通に」喋ることも出来ない醜い存在を、異質なものを憎むのはきっと当たり前のことなんだ。……と、全部分かっていたけれど何もしようがなかった。きっとずっと自分はこのままで、一度集団に足を踏み入れてしまえばその先にあるのは「排斥」だけだと、そう分かったうえで。……あの人がいてくれるなら、あの人といるためなら、攻撃も享受出来ると──頑張ると決めたのだ。

 

 まほろが、そのぬるい両腕で優しくオレを抱き締めた時、不思議で仕方なかった。ああ、どうしてこの人はこんなに自分を安心させるんだろう。願わくばずっとこの両腕の中にいたいと、そんな不相応な望みを抱かせるのだろう。……違う、どうしてオレは、この人といるとこんなにドキドキするの。自分なんかが、こんな自分なんかが。拒絶されるのが怖くてずっと見て見ぬふりをしてきたけれど、……潮時だと思った。オレの中に芽生えてしまった感情と、この人と──まほろと、ちゃんと向き合うことが、相棒としての「誠実さ」だと思った。

 まほろが口を開いてその答えを俺に告げた時、信じられないという驚きと、この人は絶対に嘘はつかないんだという確信が同時にあった。……そして何より、怖いくらい幸せで。ああ、やっぱり、怖いってなんて素敵なんだろう!

 

 彼の答えを聞いて、晴れて「恋人」になった今。オレは、まほろの相棒として、恋人として、背中を丸めているんじゃなくて、胸を張って彼の隣に立ちたいと思う。彼は絶対そんなこと気にもしないだろうけれど、それでも、もしもオレに向けられてきた視線が彼にも向けられるようなことがあったら、きっと耐えられない。……それに、濃厚なチョコレート・ムースには華やかなフランボワーズがよく合うのだ。オレも、オレ自身もCaraξel Eldritcψを構成する要素の一つなら──もっとカワイくて、素敵でいなくちゃ。